フィリピン中央銀行、銀行経営に「サステナビリティ」を組み込む「移行計画」を義務化。サステブルファイナンスフレームワークを公表。半年以内に計画策定、3年以内に実施(RIEF)
2020-05-09 19:50:18
フィリピンの中央銀行Bangko Sentral ng Pilipinas(BSP)は、気候変動とエネルギー・トランジションから生じるリスクから金融システムを守るためのサステナブルファイナンスフレームワーク導入を公表した。同フレームワークに基づき、国内の銀行に対して、銀行経営にサステナビリティ原則を盛り込んだ低炭素経済社会への「移行計画(transition plan)」の策定を義務づけ、3年以内に実行することを求める、としている。
新たに策定するフレームワークは、銀行の経営層に対して、サステイナビリティ原則を銀行自身のコーポレートガバナンスとリスクマネジメントの枠組みに盛り込むほか、経営戦略目標と業務の軸としても取り込むことを求める。これらの対応を、経営レベルで承認した経営戦略と政策で実行するための移行計画を、銀行に半年以内に策定させ、3年以内に実行するよう義務付ける。
銀行経営へのサステナビリティ義務付けは、ESG評価を重視する投資家にとって重要な判断材料になるほか、フィリピン証券取引委員会(PSEC)が昨年公表した上場企業のESG報告書の義務的開示のガイドラインに沿ったESG情報開示の規制を補完することにもなる、としている。
BSPが導入したフレームワークでは、サステナブルファイナンスについて、「グリーン経済活動や気候変動の回避策等に資金を流すことを推進するためのグリーンファイナンスを含めたファイナンス」と位置付けている。具体的には、ESGクライテリアをビジネス判断に盛り込むあらゆるタイプの金融商品・サービスを提供を推進することを目指す。
また、環境・社会課題としては、環境汚染、気候リスク、人々の健康、安全等を害するもの、コミュニティーに脅威を与えるもの、生物多様性、文化遺産保全等も含める。
BSP総裁のBenjamin Diokno氏は「気候変動による物理的リスク、移行リスクは、金融機関とそのステークホルダーに対して、重大な影響を与える社会的、経済的、金融的リスクを生み出す。今回のフレームワークに基づき、金融機関がサステナビリティ原則に基づくESGリスクマネジメントを展開することで、経済活動全体がプラスの影響を確保できるとともに、限られた資源をサステナビリティの目標に合致するよう利用できるようにもなる」と強調している。
BSPは2017年以来、金融界、産業界等と連携し、サステナビリティを経済社会に取り入れる方策を検討してきた。その結果、企業活動等を評価・支援する金融機関が、サステナビリティの導入・定着のために果たす役割が極めて重要との認識に至った。そうした認識を踏まえ、サステナブルファイナンスの枠組みを金融界全体に導入する方針を進めてきた。
フィリピンの銀行界も今回のフレームワークの適用は前向きに受け止めている。同国のAyala-led Bank of the Philippine Islands (BPI)頭取で、フィリピン銀行協会代表のCezar Consing 氏は「銀行はサステナブルファイナンス基準に適応する準備はすでにできている」とコメントしている。
アジアでは東南アジア(ASEAN)諸国の金融機関がESGやサステナビリティを金融機関経営に取り込む活動を積極的に展開している。Consing氏は「これで、われわれもASEANの同僚たちに追いつくことができる」と述べている。