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韓国政府、同国の主要重工業メーカー、斗山重工業の経営危機対策で20億㌦の公的支援。石炭火力製造企業の「温存」に環境NGOら批判。韓国版グリーンニューディールに逆行(RIEF)

2020-05-15 12:33:59

Dosan2キャプチャ

 

   韓国の文在寅大統領は、新型コロナウイルス感染の拡大や気候変動対策で石炭火力発電事業がグローバルに停滞している影響で経営不振に陥った同国の主要重工業メーカーの「Doosan Heavy Industries & Construction(斗山重工業)」を支援するため20億㌦の公的支援を進めている。これに対して、石炭火力発電所建設を事業の柱とする同社への支援は文政権が提唱する「韓国版グリーンニューディール」に反するとの批判の声があがっている。

 

 (写真は、石炭火力発電所建設が主力事業の斗山重工業)

 

 斗山重工業は、石炭火力発電所や原子力発電所等を内外で建設する韓国最大の総合重工業企業。しかし、エネルギー転換で原発建設や火力発電所建設がグローバルに低迷していることに加えて、今回の新型コロナウイルス感染の影響で、業績が急低落。資金繰りが行き詰まり、経営破たんの危機に直面している。

 

 このため文政権は、国営の韓国開発銀行(KDB)と韓国輸出入銀行(EIBK)がそれぞれ10億㌦を斗山に対して緊急ローンとして提供することを決めた。しかし、公的支援には何らの環境・社会的条件を付していないため、環境NGOらは、斗山が経営回復のため、途上国向けに新規の石炭火力発電プラント等の販売攻勢を強める可能性があるとの懸念を深めている。

 

Dosan1キャプチャ

 

 韓国のGreenpeace、Solutions For Our Climate、Gyeongnam Korea Federation for Environmental Movements、Machangjin KFEMなどの環境NGOは共同で、政府の監査検査委員会に対し、斗山への公的支援をチェックする公的監査の実施を請求した。NGOらは、斗山の経営危機はグローバルな石炭関連産業の低迷によるもので、コロナ感染以前から起きていると指摘。コロナ対策は名目でしかない、と政府の支援策を批判している。

 

 文政権が大統領選挙再選後、韓国版の「グリーンニューディール政策」を唱え、2050年までにカーボンニュートラルの達成を宣言した。なのに、石炭火力発電所プラントの最大製造メーカーの斗山を救済することは、同政策とも矛盾すると指摘している。

 

 NGOらは2つの公的金融機関の融資に対して、第三者評価を実施するほか、融資内容についての詳細な情報を開示するよう求めている。現在のところ斗山は、公的資金の受け入れに伴う経営回復計画を公表していない。

 

 NGOのSolutions For Our Climateの代表で弁護士でもあるJoojin Kim氏は「政府はこれまでも、膨大な資金を石炭依存企業に供給してきた。今回の公的支援は、同社が気候変動を悪化させる影響を継続することを認め、さらにその結果、石炭への需要減によって同社の資産がストランデッド(座礁)化することを止められないという両面で、あさはかな政策だ」と批判している。韓国のエネルギー需要のうち約40%は現在、石炭に依存している。

https://www.climatechangenews.com/2020/05/06/south-korean-government-backs-2-billion-bailout-coal-company-despite-green-finance-pledge/