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菅首相の「温室効果ガス排出量2050年実質ゼロ」宣言は、「原発推進の根拠」との指摘。「グリーン社会の実現」として「原発政策推進」を盛り込む(各紙)

2020-10-27 12:25:40

Tepco01キャプチャ
  各紙の報道によると、菅首相が26日の所信表明演説で、温室効果ガス排出量を2050年に実質ゼロとすることを宣言したことに、各方面から評価があがっているが、その実現に「原発新増設」を前提にしているとの指摘があがっている。演説で触れた「グリーン社会の実現」の中で「安全優先で原子力政策を進める」と明記したためだ。東京電力福島第一原発事故後、政府が表立って議論してこなかった原発の新増設へ動きだしかねない、との懸念の声があがっている。

 (写真は、2011年の事故をもう忘れたふりをする政治家が増えているようだ)

 

 東京新聞が指摘した。演説の中で、首相が原発に触れたのはわずか15文字分。同紙によると、それでも、「安全最優先で原子力政策を進める」という表明に、大手電力会社の幹部はわずかな変化を感じ取った。「省エネ、再生エネ、原発の3つを強調した。いよいよ原発の新増設を視野に入れているのでは」と話したとしている。http://rief-jp.org/ct8/107786
 前の安倍政権は、原発を「脱炭素化の選択肢」という表現にとどめていた。再稼働と小型原子炉など新技術の開発支援を進めてきたが、原発の新増設への言及を避け続けた。しかし菅政権が原発を脱炭素化の「柱」に据えれば、くすぶってきた新増設が現実味を帯びる。
 今月開かれた国のエネルギー政策を議論する有識者会議では「再生エネだけでは脱炭素化はできない」と、原発新増設の必要性を訴える発言も出たという。しかし実際には、ドイツのように「脱原発」「脱石炭」の両方を政策として推進し、すでに再エネ50%を実現している国もある。
 加藤勝信官房長官は青森県との会合で、原発の使用済み核燃料を繰り返し使う核燃料サイクルの推進を表明した。しかし、核燃料サイクル政策は破綻しており、核のごみの処分先も決まっていない。原発事故の発生から9年半が過ぎても3万人以上が避難を続けている。温暖化対策を盾に、原発の負の側面を無視すれば、そのツケは大きくなる。
 これまでの自民・公明連立政権は、欧州のように石炭火力発電の削減には本腰を入れてこなかった。日本の温室効果ガスの約4割は発電所などが排出源。梶山経産相は2030年までに「非効率石炭火力の段階的休廃止」の方針を打ち出したが、電力会社などの反発を抑える抜本策を打ち出していない。
 報道によると、製鉄所内に建てられた石炭火力の廃止も難しい。鉄をつくる際に排出される石炭由来のガスを燃料に再利用しており、日本鉄連盟特別顧問の小野透氏は「鉄鋼生産と一体化しているため、発電所だけ止められない」とのコメントを紹介している。
 経産省は、非効率石炭火力のフェーズアウトの一方で、超々臨界圧石炭火力(USC)等については、電力会社による新設・建て替え計画などを推進していく姿勢をとっている。脱石炭・脱原発ではなく、石炭・原発主導の「ネット・ゼロ」宣言ともいえる。NPO法人気候ネットワーク東京事務所の桃井貴子氏は「欧州など34カ国は脱石炭火力を宣言した。日本も段階的に廃止するべきだ」と政策転換を求めているとしている。