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中国共産党「五中全会」で、第14期五カ年計画の目標設定。「2060年までの実質カーボンゼロ」に向けた排出削減と炭素集約度の目標設定へ。再エネ等研究開発の特別基金設立も(RIEF)

2020-10-31 22:06:56

Chinaキャプチャ

 

  中国は第19期共産党中央委員会第5回全体会議(五中全会)で、習近平国家主席が打ち出した「2060年までに温室効果ガス排出量のネットゼロ」達成に向け、第14期5カ年計画(2021~2025年)の青写真とCO2削減目標を設定するとともに、再エネ技術開発促進のためのファンド設立等を明言した。ネットゼロ実現の技術開発競争に拍車をかける構えだ。

 現行の5カ年計画は経済の中高成長の達成を目標に掲げてきた。2025年までの次期5カ年計画ではイノベーションと、国内需要拡大、発展の質向上を目指すとしている。そのうえで、国際経済社会への関与(involvement)をより深く進めることを、成長の軸に据えるとしている。

 習主席が宣言した2060年までのカーボンニュートラル達成目標を実現するために、25年までの5年間で温室効果ガス排出量の削減目標と炭素集約度目標を設定することも明確にした。長期目標を宣言するだけでは、目標を達成できない。そこで、5カ年ごとの計画に沿って、段階的な目標設定を通じ、最終のカーボンゼロに辿り着くステップをとる。

 中国のGDPは今年100兆人民元(約1564兆円)に達する。今後は一人当たりGDPを2035年までに先進国の水準にまで引き上げることを目指す。目標通りの改革が実現すると、日本経済は一人当たり成長率でも、中国に追い抜かれる可能性もある。そうした安定成長を現実化するために、技術イノベーションに注力する。産業基盤の強化と産業チェーンのさらなる近代化を推進する。

 発展の質向上では、グリーンで低炭素な成長を目指すことを掲げる。大気、水質等の環境の改善とともに、エコシステム(生態系)の品質と安定を計画的に推進する。さらに資源活用の効率化も促進する。環境配慮では2030年に国全体のCO2排出量をピークアウトさせるほか、2060年の前にカーボン・ニュートラルを達成することと整合させる。

 

 中国の発電量に占める再エネ発電の比率はすでに日本を上回る23%(2019年)。再エネ分野の技術開発を促進する研究開発基金で、より低コスト、より高効率の再エネ発電を推進するとともに、2035年までに自動車の新車販売を電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)に限定するなどの政策誘導を加味して、低炭素・脱炭素化を進める方針だ。

 

 生態系・環境省は、25年までの5カ年計画で、長期的な温室効果ガス排出目標と整合する中期的な削減目標を設定する。同時に、その目標と整合する炭素集約度目標も示すとしている。炭素集約度目標はセクターごとに設定されるとみられる。

 

 中国は現在、世界の温室効果ガス排出量の約3割弱を占める世界最大の排出国だ。同国がCO2排出量をピークアウトさせて、カーボンニュートラルを達成すると、パリ協定が目標とする「1.5℃」「2.0℃」目標の達成も現実味を帯びてくる。それだけに、同国の削減計画がどれだけ現実味があるかどうかは、世界中の関心事でもある。

 

 一方で新型コロナウイルス感染対策の一環として、地方政府では輸出の減少に対応する景気刺激を理由に、石炭火力発電等の新増設の認可も増えているとの報道もある。今年に入ってからの石炭火力発電の認可は昨年を上回っているともされる。将来の安心か、現状の安心か、共産党主導の政策運営も万全とも言い切れないようだ。

 

http://www.xinhuanet.com/english/2020-10/31/c_139479636.htm