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ジョン・ケリー元国務長官、バイデン次期米政権下で気候変動担当の大統領特別特使に任命へ。パリ協定復帰にまず取り組み(RIEF)

2020-11-24 17:48:26

Kerry001キャプチャ

 

 バイデン次期米政権で気候変動問題を担当する特別大統領特使に、ジョン・ケリー元国務長官が就任することになった。ケリー氏は、2015年のパリ協定に際して、米国代表で署名した経験を持つ。同氏はバイデン氏の指名を「光栄だ。次期大統領、各国の仲間、パートナー、さらに気候運動を展開する若者たちとともに、気候危機に挑戦したい。気候危機は重要で緊急事態」とコメントしている。

 

 ケリー氏は、オバマ政権の2期目に国務長官として、パリ協定の調印式で署名した。国連での署名に際して、同氏は孫娘を抱きかかえて臨み、「将来世代」のために取り組む姿勢を見せた。そのパリ協定から、トランプ政権は離脱し、4年間の「米国不在」が続いていた。ケリー氏が気候問題の特別特使になることで、米国の協定復帰を改めて世界にアピールすることになる。

 

John Kerry001キャプチャ

 

 ケリー氏に抱きかかえられて、パリ協定の署名に臨んだ孫娘は、当時2歳のイザベラちゃん(Isabelle Dobbs-Higginson)。ケリー氏が前妻との間で設けた2人の娘のうち、アレクサンドリアさんの娘。

 

 ケリー氏は気候問題を「国家の安全保障上の脅威」と形容した。同氏は国務長官時代を含め、外交の専門家として活動してきた。欧州だけでなく、中国等とも気候問題での協議を重ねた経験を持つ。2014年には中国を6日間にわたって訪問。習近平国家主席らと会談して、世界の二大CO2排出国である米中のCO2排出削減交渉を進め、翌15年の合意にこぎ着けた。

 

 ケリー氏は昨年、「ゼロに向けた世界大戦(World War Zero)」と名付けた超党派の活動を立ち上げた。温室効果ガス排出量実質ゼロを実現するため、人々への啓蒙活動を推進することが狙いだ。トランプ大統領を筆頭に、気候変動問題の重要性を軽視する向きが依然少なくないことから、2020年中に1000万回の気候対話をグローバルに展開するのが目的だ。

 

 賛同者には、カーター、クリントンの両元大統領をはじめ、俳優で元カリフォルニア州知知事のアーノルド・シュワルツェネッガー、レオナルド・デカプリオ、エマ・ワトソン、ゴードン・ブラウン元英首相等が名を連ねている。ケリー氏は「気候変動は改善するどころか、悪化している。この闘いは、(政治的に)同盟国でないところとも手を結んで闘う『戦争』のようなものだ」と指摘している。

 

 バイデン次期大統領は、大統領就任のその日に、パリ協定復帰を約束している。パリ協定を結び、今も、協定の中身を充実を追求しているケリー氏を特使として起用することは、気候変動問題を最重視政策の一つとしていることの表れともいえる。

 

 ケリー氏は、ベトナム戦争に従軍し、3度の負傷をした経歴を持つ。帰還後は一時、ベトナム戦争は不正なものだったと抗議して、ワシントンの国会議事堂前で勲章を投げ返す反戦行動の武勇もある。その後、法律家となり、マサチューセッツ州の検察官に就任。活発な活動をした後、1982年に州副知事に、84年には同州選出の上院議員に、それぞれ就任して、政界入りした。

 

 2004年には民主党大統領候補の指名を勝ち得て、当時現職のジョージWブッシュ大統領と大統領選挙を争ったが敗北した。その後、民主党のオバマ政権の2期目に国務長官に就任、2016年4月には現職の米閣僚として初めて広島の平和記念公園を訪問、原爆死没者慰霊碑に献花した。バイデン氏より1歳若く、12月に77歳になる。

 

 同氏は「米国はまもなく、気候危機を国家安全保障上の脅威として取り扱う政府を持つことになる」とツィートしている。

 

https://worldwarzero.com/