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経産省、電気自動車等の販売比率が目標未達のメーカーに、クレジットで補填できる制度を検討へ。米カリフォルニア州の政策コピー。電力等の高排出企業向けクレジット制度も期待(各紙)

2020-12-04 13:12:16

ZEVキャプチャ

 

 各紙の報道によると、経済産業省は2020年代後半に自動車に温室効果ガスのクレジット取引制度を導入する検討に入ったという。国内の自動車メーカーに電気自動車(EV)などの販売比率目標を立てさせ、目標に届かない場合は達成済み企業からクレジットの購入で補う仕組み。米カリフォルニア州が導入しているZEV規制をコピーする内容だ。ただ、同州は自動車以外でも電力、鉄鋼、セメント等のCO2高排出事業対象の排出権取引制度を実施しているが、そちらの導入の可否は不明だ。

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、菅首相が提唱した2050年の温室効果ガス排出量実質ゼロを達成するための施策と位置付けている。自動車については2030年代半ばに新車販売は電動車のみとする目標を設け、その目標達成を促すために、電動車製造に出遅れたメーカーは外部からクレジットを購入することで埋め合わせする仕組みを導入する。http://rief-jp.org/ct8/108786

 

 報道によると、10日に自動車業界関係者を集めた会議を開き、新制度や目標設定の議論を始め、年内にまとめる温暖化ガス排出削減の実行計画に反映させるという。

 

 経産省がモデルとするカリフォルニア州の制度は、1990年からZEV(ゼロエミッション車規制)として実施されている。同州以外にも、ニューヨーク、マサチューセッツ、ニュージャージー等の各州でも実施されている。同制度ではEVや燃料電池車(FCV)などの新車販売比率が目標に届かないメーカーは、目標達成済みの企業から排出枠を買わねばならない。

 

 同州では、日本車が強いハイブリッド(HV)も電動車とはみなされないので、日本のトヨタ、ホンダ等も、EVメーカーのテスラ等からクレジットを購入している。クレジットを購入せず、目標を達成できないと罰金を科せられる。罰金額は1クレジット当たり5000㌦とされる。EVメーカーのテスラは本体のEV車の販売に加えて、他社向けのクレジット販売で大きな収益をあげている。

 

 カリフォルニア州の制度では、ZEV自動車メーカーは発生するクレジットを発生年度だけでなく、翌年の生産にも活用できるほか、相対取引で他社へ販売できる。

 

 ただ、自動車に対する温室効果ガス規制はZEVの販売促進拡大にとどまらない。鉄道や公共交通機関の輸送ネットワークの構築、自転車道の整備、歩行者優先、マイクロモビリティ等を支援する移動インフラ構築も含めた総合的な対策となっている。日本の経産省はこうしたカリフォルニアの政策のうち、電動車普及策だけをピックアップする形になりそうだ。

 

 また同州は、2013年から、CO2排出量が年間2万5000㌧以上の事業企業(鉄鋼、ガラス、セメント、電力、製紙等)を対象としとした排出権取引制度(キャップ&トレード方式)を実施している。各事業所は排出目標を達成できない場合は、達成できた企業からクレジットを購入することで目標を達成するという基本の仕組みは、ZEV規制と同じ。実際は、事業所の排出権取引制度が基本で、それを自動車販売に転用したのが経緯だ。

 

 経産省は、鉄鋼や電力等を所管に抱えていることから、自動車の規制に加えて、温室効果ガス高排出企業を対象とした排出権取引制度の導入も検討してもらいたい。同省がモデルとするカリフォルニア州の場合、ZEV規制についても、並行して鉄道や公共交通機関の輸送ネットワークの構築に力を入れている。シームレスで手頃な料金で利用できるマルチモーダルな移動手段の提供を目指し、自転車、歩行者、マイクロモビリティをサポートするインフラ構築も含めている。

 

 日本では、自動車はCO2排出量の2割弱を占める。ただ、現在はEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の比率は19年時点で0.9%。同省では、2030年代半ばに、新車販売をHVを含めた電動車に限定する方針を示している。http://rief-jp.org/ct8/108786

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201204&ng=DGKKZO66960220T01C20A2MM8000