HOME10.電力・エネルギー |独仏英等の欧州7カ国が、海外での石炭等の化石燃料事業への輸出金融停止で「未来への輸出金融連合(E3F)」を立ち上げ。脱炭素ファイナンスを他国にも呼び掛け。日本はどうするか(RIEF) |

独仏英等の欧州7カ国が、海外での石炭等の化石燃料事業への輸出金融停止で「未来への輸出金融連合(E3F)」を立ち上げ。脱炭素ファイナンスを他国にも呼び掛け。日本はどうするか(RIEF)

2021-04-15 22:29:36

Franc001キャプチャ

 

  独仏英等を中心とする欧州7カ国は、海外での石炭等の化石燃料事業への輸出金融を停止すると宣言した。14日にオンラインでの会議に参加した7カ国は「未来への輸出金融連合(Export Finance for Future:E3F)」を結成、「脱炭素ファイナンス」とともに、持続可能で気候フレンドリーな事業への金融支援を増大させるとした。7カ国はE3Fへの他国の参加を呼び掛けていく。

 

 「E3F」連合に加わったのは、3か国のほか、デンマーク、オランダ、スウェーデン、スペインの各国。主催したフランスの経済財政リカバリー相のブルノ・ル・メール氏は「金融は地球温暖化に対する闘いを促進する力にならねばならない。E3Fはその戦略の一つだ。今回、初めて複数の国々が持続可能な事業を支援し、石油・ガス産業への輸出金融を、もっとも有効にフェーズアウトするための協力を宣言した。今が決断の時だ」と強調した。

 

 7カ国はOECD諸国の輸出金融のほぼ40%を占める。E3F設立宣言では、削減対策なしの石炭火力発電事業(unabated coal power)と火力発電用の石炭鉱業、石炭サプライチェーンインフラについて、輸出金融の対象外とすると明言した。ただ、他の化石燃料については、現状の貿易金融をレビューし、各産業の特性を考慮しつつ、最も望ましいフェーズアウトの支援を評価する、と限定的な条件をつけた。

 

 このうち、「削減対策なし」の石炭火力発電事業については、排出削減を追加する超々臨界圧石炭火力発電が含まれるのかどうかは、明確ではない。また火力発電以外の鉄鋼生産や化学事業等向けの石炭使用については言及していないなど、完全な「脱石炭」ではないとの見方もできる。

 

 また、輸出金融の停止を宣言した石炭火力事業等についても、7カ国統一の廃止日は設定せず、各国政府の判断に委ねるとしている。E3Fを立ち上げた7カ国は、化石燃料への輸入金融を停止し、再エネ等のグリーンファイナンスを支援するための原則を次のように掲げた。

 

 ①経済のすべてのセクターにおいて、持続可能な事業への輸出の展開をさら支援するためのインセンティブを発展させる。

 ②削減対策なしの石炭火力発電事業(unabated coal power)に対する貿易と輸出支援を停止する。

 ③現行の化石燃料事業への貿易輸出金融を点検し、各産業の個々の事情を考慮したうえで、どうすればもっともうまく停止できるかを評価する。

 ④各国の貿易輸出金融活動を気候対応の視点でレビューをし、気候インパクトの理解を共有、手順化し、気候関連情報の透明性を改善するために協働する。特に、持続可能な事業を確認するためにそれらの情報を生かす。

 ⑤他の貿易金融の提供機関と連携し、気候緊急事態を正しく盛り込んだ公平な競争条件の形成を視野に入れ、このイニシアティブをOECDのすべての場で促進していく。

 

 ル・メール氏は「欧州諸国が国内では厳しい排出規制を採用しながら、海外では炭素集約型事業を支援するというのは、偽善でしかない」と強調している。

 

 すでに7カ国のうち、複数の国は個別に輸出金融の厳格化を打ち出している。英国は昨年、今年3月末を期限として、新規の原油、天然ガス、石炭採掘事業への輸出金融や政府援助、貿易支援等を、極めて限定的な例外を除き、停止するとの措置を打ち出している。

 

 フランスは、新規の石炭開発と石炭火力発電事業への輸出金融を停止したほか、石油・ガス開発については2035年までにフェーズアウトする方針を示している。スウェーデンの輸出信用機関のEKNは化石燃料の採掘・抽出事業への輸出金融を2022年までに停止するとしている。ENKは石炭採掘や輸送事業に関連する輸出に対する新規の信用保証についてはすでに昨年末に停止している。

 

 ル・メール氏はバイデン米政権にもE3Fへの参加を期待していると表明している。米気候特使のジョン・ケリー氏は、すでに米国が海外での化石燃料事業への支援を停止する姿勢を示している。一方で、日本をはじめ、中国、韓国、カナダ等の輸出信用機関(ECAs)は、米キャンペーン団体「Oil Change International(OCI)」から、2020年の世界最大の化石燃料への輸出金融支援国として名指しで非難されている。

 

  OCIは7カ国によるE3Fの結成については、「将来の多国間の交渉を促進する政治的ガイダンスを提供するモメンタムになるだろう」と評価する一方で、国によって「公約」に差があることに懸念を示している。例えば、フランスの天然ガス・ファイナンスのフェーズアウト期間(2035年まで)の長さ等を批判している。

https://www.tresor.economie.gouv.fr/Articles/2021/04/14/seven-countries-launch-international-coalition-export-finance-for-future-e3f-to-align-export-finance-with-climate-objectives