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原発輸出>日本政府への抗議文送付、その後の顛末(メコン・ウォッチ)

2012-06-14 18:45:54

第2原発看板(写真提供:FoE Japan)
第2原発看板(写真提供:FoE Japan)


5月28日のメコン開発メールニュースで、古文書研究を行うハンノム研究院のスタッフで、ベトナムの古典音楽史研究者として著名なグエン・スアン・ジエン氏が、人気のある自身のブログに日本政府向けに原発輸出を批判する文書を掲載し、脅しにも屈せず、それを日本政府に郵送したという情報をお伝えしました。

その後、ジエン氏は6月1日、ハノイ市情報メディア局に呼び出しを受けました。そこには、80歳を超える年齢でありながら、個人的に汚職追放に取り組んでいる元教師の女性、レ・ヒエン・ドゥック氏とハ・フイ・ソン弁護士が同行したそうです。ソン弁護士は書類不備を理由にすぐに部屋から追い出されたといいます。ドゥック氏は部屋に入れるよう抗議した際、ガラスのドアを蹴って怪我をしましたが、夜中の3時まで手当を受けられなかったといいます。ジエン氏は午後5時ごろ解放されました。

非常に奇妙なことですが、以下も含めどの報道も、なぜジエン氏がこのタイミングで情報局から呼び出しを受けたのか明らかにしていません。一部では、ジエン氏らが取り組んでいた土地問題が理由、とされているようですが、それは数か月前のことだそうです。前回お伝えした通り、ジエン氏のブログの記載によると、彼の事務所を訪れて乱暴を働いた人物たちは、はっきりと日本政府向け署名のブログ記事の削除をもとめています。

その後、RFIベトナム語放送は、ジエン氏が情報局の監査に対し、不服を申し立てたことを報道しています。以下、匿名の翻訳者の協力でベトナム語記事を翻訳した内容をお伝えします。

原文はこちらです。
http://www.viet.rfi.fr/viet-nam/20120606-tien-si-nguyen-xuan-dien-khieu-nai-viec-bi-thanh-tra

 


(RFIベトナム語放送)

 

 

また、メコン・ウォッチではベトナムの原発輸出に関して、下記のページにまとめております。併せてご覧ください。
>>  ベトナムの原発開発計画と日本の原発輸出

***
グエン・スアン・ジエン博士、監査を受けたことに不服申し立て
トゥイ・ミー
2012年6月6日 RFIベトナム語放送

昨日2012年6月5日、xuandienhannom.blogspot.comのブログページの主であるグエン・スアン・ジエン博士は、ハノイ情報メディア局に不服申立書を送付した。博士によると同局での監査に「法律を遵守しない」の行為があったためだ。

グエン・スアン・ジエン博士の不服申立書は、2010年の監査法を引用して、同法による監査実施の決定の条件のひとつとして「法律違反の証拠が発見されたとき」と規定されているが、ハノイ情報メディア局による監査決定には彼がどのような違反をしたかは記されていない。

同時に監査時にはハノイ市公安幹部2名が同席したが、彼らは監査実施機関に属していないため、07/2012号政府議定に合致しない。

さらに上述の不服申立書では、監査中にその監査の目的の核心には触れず、強圧的な態度で、監査を受ける側は文書で内容の通告を受けることもないため説明ができなかった。グエン・スアン・ジエン博士は、監査の状況を本人の同意なくビデオと写真で撮影されたこと、そしてあたかも刑事事件で告発されたかのような扱いを受けたことにも不服を申し立てている。

グエン・スアン・ジエン博士は情報メディア局に対して、上述の法律を遵守していない監査決定を破棄するように要求し、同局に出向いて監査を受けることを拒否している。また同氏は説明が求められる問題を事前に文書で通告し、弁護士と証人の同席と援助を認めるようにと求めている。

本日6月6日のジエン博士への電話インタビューによると、明日(訳注:6月7日)ハノイ情報メディア局が同氏の自宅に人を派遣し、監査を続けるとのことである。

昨日VTVベトナム中央テレビは、ジエン氏に同行して情報メディア局に行ったレ・ヒエン・ドゥック氏を批判するルポを放映した。ベトナム共産党のホームページも、混乱を引き起こした対象者たちを処分するために公安が証拠を集めているという記事を掲載している。

グエン・スアン・ジエン博士のブログは有名で、アクセス数も非常に多い。昨年の東海(訳注:日本名は南シナ海)における中国の攻撃的態度に反対するデモでは、氏のブログが状況をリアルタイムで詳しく報道した。また最近のティエン・ランおよびヴァン・ザンの土地強制収用事件では、グエン・スアン・ジエンのブログが多くの意見や声明を載せ、大勢の署名を集めていた。

6月1日にグエン・スアン・ジエン博士はハノイ情報メディア局に氏の個人ブログに関することで呼び出され、監査決定の通告を受けた。同日、ブログはアクセスできない状態になったまま現在に至っている。

5月18日には、自称傷病兵の見知らぬ一団が故意にグエン・スアン・ジエン博士の職場であるハンノム研究所に押し入り、氏のブログから記事を削除するように脅迫するという事件も起こっている。

(その後の顛末2)

ネット上で伝えられる現地の状況に危機感を持った日本の市民は、日本政府に対し、次のような要請書を発出しています。要請書は、国際環境NGO FoE Japanからの2日間という短時間の呼びかけにも関わらず、1255筆の署名を集め、6月4日に日本政府に提出されました。詳しくは以下もご覧ください。

 

http://www.foejapan.org/energy/news/120604.html

この要請書は引き続き署名を集めています。

 

メコン・ウォッチではベトナムの原発輸出に関して、下記のページにまとめております。併せてご覧ください。
>>  ベトナムの原発開発計画と日本の原発輸出

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内閣総理大臣 野田 佳彦 殿
外務大臣 玄葉 光一郎 殿

原発輸出に対するベトナム人有志から
日本政府宛抗議文の取り扱いについて(要請)

先日、グエン・スアン・ジエン氏らベトナム人有志453名が署名した抗議文書(注)が日本政府宛に提出されました。抗議文書の内容は、日本のベトナムへの原発輸出に関するもので、日本の技術を持ってしても事故を防げず、日本では多くの人々が原発に強い懸念を持っていると指摘、日本国内の商業用原発50基がすべて停止したことにも触れた上で、日本政府がベトナムの原発建設を支援するのは無責任、もしくは非人間的、不道徳な行動だ、などと批判しています。5月18日、同氏の勤務する研究所に傷病兵をなのるグループが乱入し、同氏を威嚇、文書の削除を求めました。また、最近になって同氏に対してハノイ市の監察に出頭命令が出され、その後、同氏のブログが閉鎖されました。

福島原発事故の悲惨で深刻な事故は未だ収束せず、多くの人々が苦しんでいます。この事故の経験を踏まえ、私たち日本の市民は、再稼働に反対し、原発依存からの一刻も早い脱却を望んでいます。日本の国内において、原発の安全性に対する疑念が高まり、放射性廃棄物の処理の解決のめどはつかず、原子力ムラによる政治・経済の支配が横行しています。麻薬のような原子力依存から抜け出すことを求めて多くの心ある市民が声を上げています。

私たちは、同じアジアの同胞として、ベトナムがこの危険な技術を導入することにより、日本と同じ過ちを繰り返し、ベトナムの人たちが、原発に依存し、危険と隣り合わせの生活を送らざるをえなくなることを憂いております。

原発はベトナムの国民ばかりか周辺国の住民に多大なリスクを負わせることになります。一部の日本の産業界の利益のために、ベトナムへの原発輸出を強行することは、日本にとっては大きな汚点となるでしょう。

私たちは、グエン・スアン・ジエン氏らベトナムの市民たちが、勇気をもってこのような文書を日本政府に提出したことに深い敬意と共感の意を表明します。

私たちは、日本政府に対しては、この文書を誠意をもって検討し、その回答を示すように求めます。また、日越両政府に対して、本文書を発出したことにより、グエン・スアン・ジエン氏ら署名者がいかなる不利益をうけないように必要な措置を講ずることを求めます。

日本の市民社会・国際社会は、本件を注意深く見守っております。両政府が、この命がけの要請に対して真摯に対応することを切に要望いたします。

賛同署名1255筆

<呼びかけ/問い合わせ先>
国際環境NGO FoE Japan

(文責 メコン・ウォッチ)

http://mekongwatch.org/resource/news/20120613_01.html

http://mekongwatch.org/resource/news/20120614_01.html