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IPCCが発表:再生可能エネルギーは今後最も発展するエネルギー(WWF)

2011-05-11 01:31:34

IPCCは、2011年5月9日、アラブ首長国連邦の首都アブダビで、『再生可能エネルギー源と気候変動の緩和に関する特別報告書』を発表しました。これは、再生可能エネルギーが先進国・途上国合わせたすべての国にとって、大きな可能性と便益があることを明らかにしたもので、急速な再生可能エネルギー普及の可能性を示した画期的な内容です。

IPCCが再生可能エネルギーに関する報告書を発表





IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した今回の報告書は、900ページに及ぶもので、164の再生可能エネルギーに関するシナリオを比較、太陽光や風力といった再生可能な自然エネルギーの動向と、今後の見通しに関する、包括的な内容となっています。

また、この発表に先立つ5月5日~8日までの間、100カ国以上の政府が、政策決定者のための要約版の内容に関して交渉し、「政策決定者向けの要約」を承認し、合わせて発表しました。この要約は、各国の政策を決定する政府担当者や政治家、ビジネスのリーダーたちが、議論の参考とする際の公式の資料となるものです。

この報告書の中でIPCCは、再生可能エネルギーが「今後、最も急速に発展していくエネルギー」であるという予測を明らかにしました。特に、エネルギー消費の大幅な増加が予測される途上国を含め、世界全体にエネルギー供給が可能という点で、化石燃料を凌駕するとしています。
また、ほとんどの再生可能エネルギー、殊に太陽エネルギーが、今後数十年で、費用も十分下がってくることも指摘しています。





示された再生可能エネルギーのポテンシャル


この点について、WWFも同様の見通しを持っています。近年の再生可能エネルギーへの大幅な投資の風潮と、風力と太陽エネルギーのコスト低下は、再生可能エネルギーの拡大へのよい入り口です。

そして実際、エネルギー効率改善と再生可能エネルギーに代わる代替案はないといっても過言ではありません。従来の技術で採掘可能な範囲の石油とガスの産出量が縮小している現在、世界は化石燃料への新規投資をやめ、早急にクリーンで持続可能なエネルギー源へシフトしていく必要があります。

再生可能エネルギーを、脇役程度の存在から、主要なエネルギー源へと変貌させていくためには、世界のあらゆる地域で、大規模な導入を支援する政策と資金が必要となるからです。

IPCCの報告書は、こうした再生可能エネルギーの大規模な導入にとって、現状で障壁となっている問題を示すと同時に、再生可能エネルギーが先進国・途上国合わせたすべての国にとって、大きな可能性と便益があることを明らかにしています。

大幅なエネルギー効率改善と原発の段階的廃止を





WWFは、2011年2月に、2050年までに100%再生可能エネルギーで賄う社会を可能とする『エネルギー・レポート; The Energy Report』を発表しました。このレポートは、エコフィス(世界有数の気候・エネルギーに関するコンサルタント企業)の詳細なシナリオを元としており、再生可能エネルギーの大きな可能性と、今ある技術を基本としたときの障壁を示したもので、過去に発表された再生可能エネルギーに関する見通しの中でも、最も意欲的なシナリオです。

IPCCのそれよりも、さらに大胆な将来予測を付け加えたWWFのエネルギー・レポートの発表は、残念ながら今回のIPCCによる「シナリオ比較」には間に合わなかったため、報告書中にあるシナリオ分析には含まれていません。

しかし、その内容はいずれも、再生可能エネルギーの大幅な普及と、エネルギーの効率改善(省エネ)とを合わせた場合、より可能性が拡大することを指摘したものです。




こうした視点のもと、エネルギー安全保障と、エネルギー効率改善を進め、同時に温暖化を危険なレベル以下に抑えるために、国際社会は早急に対策に取り組んで行く必要があるといえるでしょう。

今、日本では、未曾有の震災と原発事故で、今後のエネルギーのあり方が最も問われています。今こそ、安心で安全な エネルギー供給と同時に温暖化をも抑える社会へと変革していくときです。

WWFジャパンは、IPCCの再生可能エネルギーに関する報告書を歓迎するとともに、WWFエネルギー・レポートのシナリオを日本でも実現させることをめざし、大幅なエネルギー効率改善と原発の段階的廃止による、100%再生可能エネルギー社会を訴えていきます。

IPCCによる報告のポイント(WWFジャパンによるまとめ)



  • IPCCは、再生可能エネルギーは急速に伸びており、2009年は金融危機にもかかわらず、風力30%以上、太陽光発電50%以上、太陽熱20%以上増加したと指摘しています。
    また、2008年から2009年にかけて新たに増加した設備容量のうち、ほぼ半分が再生可能エネルギーで占めるほど、成長しているのです。
    また、増加した再生可能エネルギー発電所の50%以上が途上国にあります。【6ページ】

  • IPCCは、再生可能エネルギーの可能性は、世界で現在必要なエネルギー需要、大幅に超える量があると指摘しています。
    その可能性は巨大で、今回の報告書の中で詳細に検討されたシナリオにおいても、今まだ大部分(約97%)が未活用であるとしています。
    少なくとも、再生可能エネルギーについて、量的に間に合わないという心配はなく、特に途上国の無電化地域にもエネルギーを供給する点において、再生可能エネルギーには大きな可能性があると指摘しています。【22ページ】

  • ほとんどの再生可能エネルギーは、技術的な発展とともに今後数十年で、費用も十分下がってくることも示しました。【11ページ】

  • 再生可能エネルギーをさらに拡大していくためには、社会的インフラを整え、投資を促す政策で後押ししていくことが必要だと指摘しています。【23ページ】

  • そして、再生可能エネルギーの更なる普及は、2010~2050年の間の累積で、計2200億トン~5600億トンの温室効果ガス排出量削減に繋がる可能性があることを指摘しています。