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国際的な気候変動適合資金の流れは、途上国政府や政治的紛争国を避けて流れる傾向にある(AlertNet)

2011-05-14 23:30:20

By Laurie Goering(AlertNet): 2009年末のコペンへーゲン合意によって、途上国の気候変動対策を推進するために先進国が供給する年間1000億ドルの追加資金をどうやって集めるかという方法論の実現は容易ではない。だが、それ以上に、それらの資金を、途上国において、公正かつ効果的に使うことのほうが、より大きな挑戦になるかもしれないと、専門家が警告している。

先進国から途上国に供給される気候変動対策資金は、経済的に貧困で、政治基盤も脆弱な途上国々が温室効果ガスの排出を削減し、さらに気候変動の影響に対応することを支援することを目的とする。それらの資金の流れは、途上国全体に流れるのではなく、当然のことだが、国内で汚職が著しく、紛争が絶えないような国を回避することになるだろう、とロンドンに拠点を置く Overseas Development Institute (ODI) の専門家が指摘している。

 途上国政府の資金管理面が不十分とみなされる場合は、途上国が自ら実施しようとする気候変動対策事業よりも、寄付国の支援にもとづく事業に限られるだろう、とも指摘している。つまり、先進国側が資金配分、供給の主導権を握るということである。資金提供の際に、直面するこうしたジレンマは、投入した資金が途上国政府の能力を向上させることに活用されるのかどうかが十分に評価できにくいという点にある。

貧困対策の専門家であるTim Goreは次のように問いかける。「何を優先するかだ。政府のリーダーシップを優先するか、あるいは政府の能力増強を優先するか」。彼は、a climate change policy adviser for anti-poverty charity Oxfamである。

彼によると、たとえば、カンボジアでは, 温暖化対策の先進国からの寄付金は、主に政府機関を中心に配分されてきた。ただしその結果、同国政府は、そうした資金を運営することで自らの能力増強の機会を得ることも、学習するチャンスもほとんどなく過ぎてきた。

エチオピアではどうか。同国は、国連のGlobal Environment Facility(GEF)をはじめとして、主要な寄付機関などから、気候変動に対応する実質的な資金供給を受けてきた。しかし、同国が支援を受けて実施してきた気候変動対策のどの国家的適合事業も、同国が必要とする優先度を考慮しているわけではない、と指摘している。

さらに、気候変動の影響を受けやすい脆弱な国々は、多くの寄付国や投資資金を含む適合対策資金を確保することをめぐって、途上国間での競合に直面している。こうした事態を乗り越えるためには、コペンで合意したGreen Climate Fund を各国共通の、国際的システムとして整合性のある仕組みに仕上げることである、と同氏は述べている。

供給する資金をより効率的に活用させたいという寄付国側の努力は、結果として、相対的に政府機能が働き、市民組織が一応あり、かつ気候変動機器に直面している一握りの国々に、資金が集中することになり、適合資金全体の配分がいびつになることにもつながる、ともGore氏は指摘している。

その具体的な事例が、バングラデシュ、ニジェール、モザンピーク、セネガル、エチオピアなどの国々である。これらの国々は、これまで相対的に多くの気候変動適合資金を手にしてきた。これに対して、中央および西アフリカ諸国や中東諸国のように、政治的衝突が絶えない国々に対しては、寄付国や民間の寄付資金の流れも明らかに限定的に推移してきた。

「金融は本来的に、取り組もうという国々の意欲に基づいて展開される」とGore氏は述べる。その結果として、「政治的紛争が続く国々対しては、資金供給の大きなギャップが生じてきたといえる」という。

 これまでの途上国向け温暖化対策資金の流れは、寄付国ごとのプロジェクトによってばらつきがある。途上国自身が優先度を置いている食糧安全確保や水資源管理、さらに自然災害リスクの減少などのプログラムを含む重要事業よりも、途上国政府の能力増強を含む寄付国側が支援する事業に重点的に配分されてきた。

気候変動の資金供給は通常の政府援助資金よりも「追加的」であるか、あるいは、現在の政府援助において最優先度のものであるのかということの見極めは、資金の受け取り側となる途上国側にとって、各国事情と複雑に絡み合った問題である。実際、気候変動への適合と、貧困撲滅プログラムとは、しばしば劇的に重複する。さらに、気候変動適合のための資金供給を従来のものと別建てにすることは、資金の不必要な重複と無駄を生じることもありえる。

 これまで、寄付国は気候変動適合のための資金供給として、年間30億ドル~40億ドルを約束してきた。実際に、そのうち10億ドルの支出が承認されており,うち実際に、3億5000万ドルが支出された。ただ、これらの資金供給は、2012年までに気候変動対策支援の必要資金とされる300億ドルに比べて、まだまだ少ない。

富裕国は2020年までに年間1000億ドルを、気候変動の影響を被る途上国支援のために投じることを、コペンハーゲン合意で約束している。そのための原資としては、新たな国際税や政府資金などを含めた幅広の資金源からの拠出が期待されている。