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フランスがシェールガス抽出技術の環境影響を重視した初の禁止法制定へ(FT)

2011-05-16 22:04:11

英ファイナンシャル・タイムズ(5月11日)によると、フランス国民議会は、シェールガスや同じくシェール岩油を採取するための水圧破砕法の技術を禁止する法案を採決した。同技術が環境負荷を高めるとの反対派の意見を取り入れたものだ。ここ法案が来月の上院も通過すれば、フランスは水圧破砕法(フラッキング)を禁止する初めての国になり、シェールガス採掘に待ったをかけることになる。

FTの記事参照:http://www.ft.com/intl/cms/s/0/907fd72c-7c06-11e0-9b16-00144feabdc0.html#axzz1MWAiAgZW

 同技術は、水・化学薬品・砂を岩層の中に注入して破壊し、以前ならば採取できなかった同岩層からのシェールガス等を採取するものである。国民議会による圧倒的な可決は、同国の環境保護論者が同技術の採用が飲用に使う地下水を汚染する恐れがあるとして、フランス全土で抗議活動を展開したことを受けている。

 多くの人々は今年初め、いくつかの開発許可書が住民協議なしに同技術の採用を許可されていたことに対して憤慨していた。この問題は、来年のフランス大統領選挙戦を控えて、非常に政治的なテーマとして扱われて来た。環境保護論者と野党の社会党は、政府が、シェールガス開発を重視する産業界のロビー活動に屈してきたと非難してきた。なぜなら、政府は土壇場の段階で、政府提案の法案を修正して、シェールガスや同じシェール石油などによる環境影響についての科学的調査の実施を盛り込んだためである。政府は、年末までに最初の調査状況を議会に報告することになる。

 フランスは電力のほとんどを原子力発電に依存しているだ。が、日本で起きた東電福島原発事故の影響で、原発以外の他のエネルギー源への関心が高まっている。このため、仏政府は、新しいエネルギー源の活用と、環境への影響に対する国民の懸念との間で、板ばさみ状態になっているわけだ。産業界の消息筋は、議会を通過した法案が、既に許可された複数の許可を無効にしなかったことは、よかったと述べている。

ノースカロライナ州デューク大学の科学者が今週発表した研究では、フラッキングで注入される化学物質が、水の供給を汚染するという証拠はないとしているが、採掘に伴うガスが、シェール井戸から飲料水の中に漏れ、爆発リスクを高めるという可能性を指摘している。

 EUの「European Centre for Energy and Resource Security」が公表したレポートは、ヨーロッパがシェールガスなどの従来型ではないガス資源を新たに開発できた場合、それらは今後60年間の必要エネルギーをまかなうことができる可能性があると指摘している。http://www.ft.com/intl/cms/s/0/d074a258-773e-11e0-aed6-00144feabdc0.html#axzz1MWAiAgZW

 来月上院での質疑でも大きく変更されることはないと見込まれているので、開発に携わっている企業は化石燃料を採掘するために使う予定の技術評価レポートを公表しなければならないだろう。というのは、これらの技術に禁止候補の水圧破砕法が含まれている場合、無効になるからだ。もしも禁止対象技術の使用を報告しなかった場合や使用していることが確認されると、当該企業の経営陣は7万5千ユーロ(約10万7千ドル)の罰金と禁固刑を課せられる可能性がある。