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EU欧州委員会が温暖化ガス削減の行程表公表。2020年に25%削減(FGW)

2011-03-09 21:21:36

欧州委員会が3月8日に公表した2050年に向けた温室効果ガス削減のためのロードマップ(行程表)によると、EUは50年に1990年比80~95%減らす目標を立てている。その達成のためのプロセスとして、2020年に25%、30年に40%、40年60%と、10年刻みでの段階的な削減目標を設定した。どこかの国も「25%削減」を宣言したが、実際の達成計画を担保する枠組みは白紙のまま。政治混迷で、「それどころではない」状態だ。

 欧州委員会の発表では、EUはこの目標達成のために、費用対効果分析に基づいた政策展開を予定している。今後の40年間に必要とされる年間の追加的投資額は、EUのGDPの1.5 %にあたる2700億ユーロとなる。投資規模全体ではGDPの19%になる。ただ、こうした低炭素化投資によって、石油・ガスなどのエネルギー輸入量が減少することで、年間1750億~3200億ユーロのプラス効果が得られるとしている。

 直接的なエネルギー節約効果だけではない。EU経済がエネルギーの外部依存を減らすことで、域内成長を高める余力が生まれ、域内での雇用創出につながる。また、温暖化ガス削減に伴うエネルギー節約以外のプラス効果も見込める。低炭素化社会に移行することで、温暖化ガス以外のばいじんや、SOx、NOxなどの大気汚染物質の削減も見込めることから、域内での大気系の健康被害が減少することに伴い医療費等も削減される。それらのプラス効果は、2050年までに年間880億㌦に上ると計算されている。

 EUはこれまで、2020年の目標として「20,20,20」を掲げている。2020年に20%削減、20%のエネルギー効率化、エネルギー使用に占める代替エネルギー比率を20%を同時達成するというものである。今回のロードマップは、この目標をさらに進めて、2020年の削減率を25%に高めることを目指している。欧州委員会は25%削減は、エネルギー効率の20%向上によって実現可能としている。EUは義務的排出権取引規制を導入しており、その効果もあって、京都議定書で約束した温暖化ガスの削減目標達成は実現が確実で、さらに大幅な削減の余地が生まれている。

 2050年の業種分野ごとの削減目標は、電力が93~99%、産業83~87%、住宅88~91%、運輸54~67%などと野心的な計画となっている。

 対照的に、日本の低炭素社会への準備は、とん挫した状態になっている。国全体での温室効果ガス削減を担保するために必要な「地球温暖化対策基本法案」は成立の目途が全く立っていない。法案自体、排出量取引制度を先送りするほか、電力や鉄鋼などの削減義務を事実上緩めるなど、目標達成の可能性に疑問符が投げかけられている。(FGW)