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国内の新規石炭火力発電計画45基に、CO2排出量約1億3000万㌧の新規追加。政府の温暖化目標の基盤揺らぐ(FGW)

2015-06-11 17:07:57

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 欧米では温暖化対策の進展で、CO2排出量の多い石炭火力発電所の建設が困難になりつつある中で、先進国では日本での石炭火力の増設ぶりが際立つ。現在の建設計画は全国17県で計45基(出力10万kW以上)に達し、CO2排出量を一気に約1億3000万㌧を増やす計算だ。政府は2030年までの温暖化目標として2013年比26%削減を掲げ、目標の低さに環境NGOなどから批判が出ているが、その政府目標でも実現性に疑問が生じている。

 

 石炭火力は地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量が他の石油、天然ガスなどの化石燃料に比べて大きい。このため、米国でもオバマ政権が2020年以降の気候変動対策の柱として、新規・既存両方の石炭火力からのCO2排出量を3割カットする規制導入を打ち出したほか、金融機関などの石炭火力事業向け融資の打ち切りも増えている。

 

 こうした欧米での流れと逆行する格好で、日本で石炭火力建設計画が増えているのは、2016年から電力事業が全面自由化に移行することを受けて、新たに電力事業に参入する事業者が増加していることがあげられる。現行では事業区域が限定されている既存の電力事業者も、自由化後は他地域でも売電できることや、原発再稼動の遅れによる発電力確保などのために、手っ取り早い発電手段である石炭火力の増設に走っている。

 

 環境NPOの気候ネットワークの調査によると、今年5月現在で、出力10万kW以上の石炭火力は少なくとも全国26道府県に計85基設置されている。最も多いのは福島の11基で、次いで北海道10、 愛知8、愛媛8、沖縄6、兵庫6 などとなっている。これに加えての45基の新規建設は、石炭火力の発電量とCO2排出量をそれぞれほぼ5割アップさせることに相当する。

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  新規計画の多い県は、福島7、千葉5、秋田4など。石炭火力のCO2排出量は、石油の1.24倍、液化天然ガス(LNG)の2.29倍とされる。「クリーン」を標榜する最新型のガス化発電でも、CO2排出量は石油より多く、LNG最新型の倍以上。このため新規建設の45基(総出力量2328万kW)の年間CO2推定排出量は、約1億3000万㌧になるとみられる。

 

 環境省は大量の石炭火力新設が「温暖化ガス削減目標の達成を困難にする可能性がある」と懸念している。石炭火力など環境に影響を及ぼす施設の建設に際しては、CO2排出量などを調べる環境アセスメントが必要だが、アセス義務付けの対象は11万2500kW以上の発電所に限られている。このため新規建設計画ではこの基準以下の小規模発電所計画が多い。

 

 そこで同省は昨年10月、こうした小規模石炭火力の環境影響を抑えるため、「小規模火力発電に係る環境汚染対策ガイドライン」を定めた。ただ、同ガイドラインは基本的に新設を止めるものではなく、CO2削減の高度技術の導入を促す内容にとどまっており、事業者の自発的な対応を前提としている。

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 一方、経済産業省は原発稼動が全国的に停止する中で、石炭火力増設を促進してきた。しかし、さすがに政府の温暖化ガス削減目標の実現性に疑問符が生じるリスクが高まってきたことを受け、このほど「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の設備基準(告示)を見直す方針を打ち出した。年内に新基準をまとめる方向という。

 

 ただ、省エネ法改正でも、基本は石炭火力抑制ではなく、発電設備の効率性などの基準を定め、新技術の採用を促す姿勢に変わりはない。「原発再稼動・石炭火力増設」という日本のエネルギー政策の”偏り”が長期にわたって持続可能性を持つとは思えない。(FGW)

http://www.kikonet.org/info/press-release/2015-04-09/emission_from_coal_power_plants

http://www.env.go.jp/press/18440.html