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米連邦最高裁 環境保護庁による発電所等への水銀規制、コスト評価不足と否定判決。オバマ政権の温暖化政策にも打撃(各紙)

2015-06-30 11:34:12

mercury無題

各紙の報道によると、米連邦最高裁は29日、米環境保護局(EPA)が石炭火力発電所などに義務付けた水銀など大気汚染物質の排出規制について、コスト評価が不十分だとする判決を出した。今回の判決はオバマ政権がEPAの規制権限によって二酸化炭素(CO2)排出量削減策を進めようとしている路線に打撃となるとの見方が広がっている。

 判決は5対4。規制自体は否定しなかったものの、企業が負担する対策コストと健康面の利益を考慮した規制案のつくり直しが必要だと指摘。規制を支持した連邦高裁判決を無効として差し戻した。

 米国の大気保全法(Clean Air Act) は、EPAに汚染物質対策について「適切で必要な対応」をとることを義務付けている。EPAはこの法の趣旨から規制設定に際してコスト配慮は不要との姿勢をとってきた。水銀規制で発電所等が必要になる追加コストは、年96億㌦と試算されている。

 またEPAは水銀規制を科すことで、喘息や未熟児の死亡などが減少する健康上のベネフィットが370億㌦~900億㌦生じると試算している。こうしたEPAの主張に対して、最高裁のAntonin Scalias裁判長は、「説得力がない」と否定した。

 

 ただ、EPA関係者は、水銀規制はすでに3年以上前に発せられており、主要な工場等はすでに規制に対応しているところが多い。SNLエネルギーのデータによると、国内の多くの発電所はすでに水銀や他の毒性物質の対応を済ませているという。

 

こうしたことから、今回の判決は、地球温暖化を引き起こす二酸化炭素(CO2)の規制とは別の施策だが、環境問題を重視するオバマ政権の政策運営に影響が出るとの見方もできる。オバマ政権は共和党が多数を占める議会での温暖化対策法案を成立させられないことから、EPAの規制力を使う手法を重視している。しかし、三権分立の立場からこうした行政手法に対して、司法が懸念を示したと受け取れるからだ。

 一方、環境保護団体は「企業の大気汚染対策を遅らせ、子どもや妊婦の健康を損ねる誤った判断だ」と判決を批判した。