HOME5. 政策関連 |原発交付金、税金転用で、実に40年間で総額3兆円を立地自治体にばらまき。経産省、新たに交付金を再稼働促進に活用へ手直し目論む(各紙) |

原発交付金、税金転用で、実に40年間で総額3兆円を立地自治体にばらまき。経産省、新たに交付金を再稼働促進に活用へ手直し目論む(各紙)

2015-08-14 17:13:25

sendainuke536942ee9ab63b808f17ec15349dc524

  電気代に税金を上乗せし、国から全国の原発立地自治体へ「電源3法交付金制度」として支払われた総額は1974〜2013年度で総額約3兆円に上ることが分かった。経産省はこの交付金を、東京電力福島第1原発事故後の一律方式から、事故前の稼働実績に基づく「みなし稼働率」方式に切り替えるという。再稼働原発が有利になる仕組みで、交付金を再稼働促進のために利用する政策意図が露わになってきた。

 

 3兆円を超す交付金総額は毎日新聞の調べでわかった。 電源3法交付金制度は、電源開発促進税法、特別会計法、発電用施設周辺地域整備法の三つに基づき、国が立地自治体へ支給する交付金や補助金のことで、74年に創設された。原発以外に、火力や水力発電所の立地自治体分も含むが、大部分は原発分だ。

 

 経産省は同交付金を立地自治体の納得を得るために活用してきた。多くの立地市町村は同交付金をはじめ原発関連収入に財政を依存している。特に福島原発事故後は、本来は、立地自治体を原発の稼働率などに応じて自治体への交付額が決まる電源立地地域対策交付金制度を、安全確保を目的とする停止中の稼働率を一律81%とみなして交付規定となっている。

 

 今回、経産省はこの「みなし規定」を見直し、福島原発事故前の稼働実績(平均約70%)に基づいて原発ごとにみなしの稼働率を定め、2016年度分から停止中の交付額を引き下げる方針を固めた。この見直し方針は、交付金の合理化というよりも、「みなし稼働率」の低下で交付金減額を恐れる自治体が再稼働要請にシフトするよう促す政策意図が入っているとの見方が有力だ。

 

 たとえば毎日新聞が例に挙げている福井県美浜町は、2014年度の原発関連収入は、同交付金の14億9000万円などを入れて歳入総額の4割強に達しており、これが関西電力美浜原発1、2号機廃炉の影響で交付金が減額するほか、「みなし稼働率」低下分の減額も加わると、財政事情からの再稼働申請が強まる、とみられている。

 

 電源3法交付金度は、地方で発電した電気を都会へ送る仕組みとして打ち出され、これまで40年以上もエネルギー政策の基盤を形成してきた。しかし福島原発事故で、立地自治体は交付金をはるかに上回る事故リスクに直面し、制度自体の在り方が問われている。

 

 財務省の資料などによると、初年度(74年度)の交付金は10億円だったが、右肩上がりに増加。11年度は原発事故を受けて健康確保事業に使途を拡大したため、2000億円近くになり、交付金総額は2兆9646億円に達した。現在の税率は1000kW時当たり375円で、1世帯当たりでは推計月113円の負担になっている。

 

 交付金のうち「電源立地地域対策交付金」は2003年度に始まり、現在は交付金全体の8割以上になっている。原発と地方財政の関係に詳しい清水修二・福島大特任教授(財政学)は「交付金は、原発を受け入れてもらうための『迷惑料』に過ぎず、事故リスクの代償に見合うのか地方自身が考え直す必要がある」と指摘している。

 

 「みなし稼働率」の見直し制度については、九州電力が11日に川内原発1号機を再稼働させることに伴い、今後再稼働した原発より停止中の原発の交付額が大きくならないよう「公平性を確保」するためと、説明している。

 

 同交付金はもともとは、2カ年度前(16年度から1.5カ年度前)の稼働実績が交付年度の金額に反映される仕組み。しかし、原発事故を受けて多くの原発が11年度中に定期検査に入ったまま停止したため、13年度以降は各市町村とも、13カ月に1回の定期検査中を除いたフル稼働に相当する81%の稼働率とみなす規定で交付を続けている。

 

 経産省の有識者委員会は昨年12月、稼働中と停止中の原発の「公平性確保」を求める意見をまとめた。これを受け、同省は制度を、福島の事故前の稼働実績を踏まえたうえで81%を超えないよう上限を設け、原発ごとにみなしの稼働率を定める方向に改める方針だ。結果的に、再稼働しない限り、各市町村への交付額は減額される。

 

 東京自治研究センターの伊藤久雄特別研究員は「国のさじ加減で交付額が決まるような今の仕組みでは、交付金頼みの財政から脱却できない。市町村は原発以外の地域資源の掘り起こしに力を入れ、国はかつての産炭地支援のような影響緩和策で支えるべきだ」と指摘する。

http://mainichi.jp/select/news/20150814k0000m040125000c.html?fm=mnm