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中国、大きな環境省『生態環境省』を設立へ。気候変動、大気、水、土壌、「南水北調」の大事業も担当(RIEF)。

2018-03-13 23:15:51

全人代の模様。法案説明に立つ李建国常務委員会副委員長、前に習近平国家主席(左)、李克強首相(右)

 中国は全国人民代表大会(国会に相当)で政府(国務院)の機構改革案を審議、政府内で分散している環境関連の機能を集約し、気候変動問題などに対処する「生態環境省」を新設する。環境問題を重視する習近平政権の意向を体現した形だ。気候変動・エネルギー・安心安全の諸課題を総合的に推進していくには、わが国も、環境、経産、農水などの各省に分かれている機能を一から見直す必要がありそうだ。

 

写真は、中国全人代の模様。法案説明に立つ李建国常務委員会副委員長、前に習近平国家主席(左)、李克強首相(右))

 

全人代での機構改革案は17日に可決される見通し。中国政府の本格的な機構改革は2013年の鉄道省解体以来、5年ぶり。第19期中国共産党中央委員会第3回総会(3中全会)で採択された「党・国家機構改革深化プラン」の一環と位置付けられている。

 

  新設される生態環境省は、現在の環境保護省(MEP)を軸に、国家発展改革委員会(NDRC)の温暖化対策部門や国家海洋局、国土資源省の環境対策部門、さらに中国北部地域の干害対策のために南部の水を河川・運河を経由して北部に送る国家事業「南水北調」も担当する。

  

 中国の現在の環境保護省は設立から10年の若い官庁だが、今回の生態環境省への転身で、さらに拡大することになる。大気、水質汚染をまき散らしてきた石炭火力、鉄鋼、セメントなどの重厚長大産業に対する排出規制、モニタリング、コンプライアンスの徹底などを総合的に展開することになる。汚染大国中国からの脱皮を目指す形だ。

 

   中国の大気汚染対策のために設立された国際協力組織のClean Air Alliance of China(CAAC)の代表Tonny Xie氏は「今回の新たな政府組織改革で、大気、水、土壌、そして生態系保護の各部門への対応が、より調和的に進められることになる。さらに今回の組織改革は、中国が将来世代の環境の質を改善へのコミットメントと投資を続けることを意味する」と歓迎している。

 

 内外の環境NGOらは、気候変動問題と低炭素成長に関する権限がNDCRから、生態環境省に移ることに関心が集まっている。グリーンピースのシニア気候アドバイザーの Li Shuo氏は「大事なことは、気候関連局のトップにだれがなるのかだ」という。

 

 NDRCの気候問題のトップは、 Xie Zhenhua氏が務めてきた。同氏は、2007年にNDRCの気候変動問題を担当して以来、国際的な気候変動交渉を担当、パリ協定でも首席政府代表を務めるなど、中国の「気候変動対策の顔」として知られてきた。同氏が引き続き、新官庁でも「顔」としての役割を引き継ぐのかどうか。

 

 気候変動対策では、昨年末に開始を宣言した全国版の排出権取引制度が、技術的要因によって、実質的なスタートができていない問題がある。実効性のある制度として稼働できるかどうかも新官庁の課題だ。グリーンボンド関連の政策は、金融機関による発行の場合は中央銀行の中国人民銀行(PBoC)、企業発行の場合はNDRCと分かれてきたが、今後、この仕分けが変更されるかどうかはまだ明らかでない。

 

 日本の場合、気候変動問題は環境省、エネルギー問題は経済産業省に切り分けられ、原子力問題も政策はエネルギー問題として経産省、放射性物質汚染は環境省となっている。また気候変動問題でも住宅関連は国土交通省、森林・農地は農林水産省などと、省間で細分化されており、総合的な気候変動・エネルギー政策とは、ほど遠い状態。

 

 日本の各省はお互いの「持ち分」を尊重し合う形が多く、効果的な対策を打ち出せない状況が続いている。