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自然エネルギー財団、日本の石炭火力新規増設でCO2排出量は、パリ協定の目標の3倍も増大。既存の石炭火力発電所も早期停止が必要。エネルギー政策の転換の必要性を強調(RIEF)

2018-05-31 00:41:10

Climateanalyticsキャプチャ

 

 公益財団法人自然エネルギー財団は、欧州の政策研究所、クライメイト・アナリティクス(Climate Analytics)の分析として、現在国内で計画されている新規石炭火力計画がすべて建設されると、排出量は パリ協定が目指す排出経路の3 倍も増えるほか、既存の石炭火力の稼働だけでも協定の目標を上回る、との報告を公表した。同財団は、報告の指摘を踏まえ、新規計画の停止と、既存発電所の早期稼働停止、設備利用率の引き下げ等を政府に求めている。

 

 公表された報告書は、「パリ協定に基づく日本の石炭火力フェーズアウト-政策決定者と投資家への示唆(Science based Coal-Phase Out Timeline for Japan) 」と題したもの。クライメイト・アナリティクスはCOP23で結成された「脱石炭連盟(PPCA)」が目指す世界の石炭火力フェーズアウトについて、科学的根拠を示す分析を行っている研究所。今回の日本の分析に際しては、同財団が日本の石炭火力発電所の関連データやエネルギー政策等についての情報を提供した。

 

 公開された報告書によると、パリ協定の目標達成のためには、世界の電力部門の急速な脱炭素化が必要であり、特に電力部門のCO2排出量の約 40%を占め、最も炭素集約度の高い石炭火力発電の対策が急務、と指摘。日本では、すでに既存の石炭火力が 45GW 導入されている中で、新たに約 18GW を新増設する計画で、うち 5GW はすでに建設が始まっている。

 

Clmate Analytics3キャプチャ

 

 日本はパリ協定の目標達成に合意したが、そうした約束と、石炭火力依存の現状の政策の矛盾を分析している。報告書は、パリ協定で合意した目標に沿って日本で許容される排出経路を特定し、既設及び新増設される石炭火力からの排 出予測とを比較した。検討ケースでは、新増設分が計画の半分、あるいは 4 分の 1の場合、古い設備からリプレースされる場合なども含めて、削減効果を検証した。

 

 最適コストの排出経路としては、2100 年までの温暖化を 85%以上の確率で2°C 未満に保ち、50%を超える確率で1.5°C 未満に抑えるシナリオを想定。この最適シナリオに基づくと、日本は石炭火力からのCO2排出を今後数年で急速に減少させ、2030 年までにはほぼゼロにする必要があるという。全世界でも、パリ協定の目標達成には遅くとも 2050 年までに石炭火力からの排出をなくす必要がある。

 

 こうしたシナリオに対して、日本で現在計画されている石炭火力発電所がすべて建設されると、排出量は 2018~2050 年のパリ協定に即した排出経路と比べて3 倍も多くなる。石炭火力が計画予定の半分等に条件を変えたシナリオでも、いずれも限定的な排出削減効果しかないことが分かった。

 

Climate Analytics2キャプチャ

 

 新規建設を一切止めて、既設の発電所だけに頼った場合でも、それらが40 年間稼働する場合は、パリ協定で許容される排出量を上回る。報告書は、こうした分析に基づいて、日本政府はパリ協定の約束に沿うならば、稼働中の石炭火力を2040 年よりも前に停止するとともに、全体の設備利用率を大幅に下げるべき、と指摘している。

 

 さらに日本政府は、石炭火力のフェーズアウトのための政策について早急に議論を始める必要がある、としたうえで、「そもそも、(日本が協定で約束した)2030 年の電源構成に基づく現在の排出削減目標(2013 年比 26%削減)自体、協定で 求められている目標とかけ離れている」と断じた。

 

 またエネルギー部門からのCO2 排出に対する法的拘束力ある総量規制がない現状では、想定を超える石炭火力の新増設を防ぐ施策がないとし、「パリ協定の目標に沿うためには、現在の効率基準及び自主行動計画の延長線ではなく、電力部門の脱炭素化に向けて石炭火力を廃止する根本的な戦略転換が必要」と、求めている。

 

 石炭火力の新増設設備への出資企業の上位 10 社として、電源開発、中国電力、JERA、九州電力、神戸製 鋼、中部電力、関電エネルギーソリューション、丸紅、三菱商事、東京ガスを列記。これ等の企業は、気候関連リスクを重視する海外投資家からは、その企業価値に対する重大な評価の低下を受ける可能性を強調している。

 

https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20180529.html