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大規模太陽光発電所の建設も、環境アセスメント法の対象に。日本野鳥の会が要望。各地で自然保護・防災、住民トラブル等50件発生(RIEF)

2018-06-06 12:00:50

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 日本野鳥の会(東京)は、自然環境の豊かな地域での大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設について、野生生物や生態系等への影響を防ぐため環境影響評価(アセスメント)制度の対象に加えるよう、環境省に要望書を提出した。同会が公表データを元に調べたところ、2000年以降で、全国で地域住民とのトラブルや、自然保護・防災上の課題等で訴訟や行政指導の対象等になった50件あるという。

 

 同会では、地球温暖化対応として、化石燃料由来のエネルギーの使用を抑え、再生可能エネルギーの利用を拡大していくうえで、太陽光発電等は積極的に導入すべきと述べている。そのうえで、「近年、森林や草原、湿地、水面などにおけるメガソーラーの建設計画が多数みられるようになり、野鳥をはじめとする自然環境保全上の問題が、各地で発生している」と指摘。

 

 そこで、メガソーラー建設と野鳥保護に関する同会の基本的な考え方として、①設置場所の限定②ゾーニングに基づく場所の選定と立地規制③地域住民等との十分な合意形成④環境影響評価法等の法制度の整備――をまとめ、要望書に盛り込んだ。

 

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 ①の設置場所については、整備済工業用地等の未利用地、大規模な建物の屋根・屋上・壁面・駐車場等、自然環境や生物多様性の保全に悪影響を及ぼさない場所に限定し、IBA(重要野鳥生息地)や鳥獣保護区などの野鳥の保護対象地、希少種の生息地、大規模越冬地、渡りの中継・渡来地、主要な採餌地及びその近傍地には、設置すべきでない、と指摘している。

 

 ②については、国や自治体に対して、風力発電施設の場合と同様に、メガソーラーの設置可能場所についてのゾーニングを行い、自然保護や景観保全の観点から、設置規制等を行うことを求めている。その際、人口減少が進む日本の社会情勢を前提とした国土及び地域デザインやエネルギー受給量の予測、必要な法制度の整備等を行うべき、としている。

 

 アセスメント法では、現在、風力発電所は対象になっているが、太陽光は対象外。この点について、国等の行政機関は、一定規模以上の発電量や開発面積の太陽光発電施設計画については、環境影響評価法や環境影響評価条例等の法規制の対象とすべき、とした。また、規模が小さい計画の場合でも、事前届出制度や公表の義務付けなど、必要な制度を早急に整備し、トラブルに繋がりそうな計画を早期に把握するとともに、必要な行政指導を事前に行うよう要請している。

 

 同会が新聞情報等を元に調べたところ、2000年4月以降で、地域住民との合意形成の遅れ、行政指導対象となったもの、防災や自然保護上の問題があるもの、訴訟に発展したものは、合わせて50事例あった。主なものでは、景観トラブル22件、防災上の懸念18件、生活環境への懸念12件、自然保護への懸念9件(複数要因)など。


 太陽光発電をめぐるトラブルが発生した地域を都道府県単位でみると、長野県(9件)、大分県(7件)、山梨県(5件)、兵庫県(4件)、高知県(3件)など、自然環境の豊かな県に多い。

https://www.wbsj.org/activity/conservation/habitat-conservation/photovoltaics/