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EU、2030年の再エネ目標を現行の27%から30%に引き上げで合意。省エネ目標は32.5%に。パリ協定の目標達成に十分かどうか議論残す(RIEF)

2018-06-30 07:27:58

EURENキャプチャ

 

  EUは、域内全域での風力や太陽光などの再生可能エネルギー電力比率目標を2030年までに、現行の27%から32%に引き上げることで合意した。EUはパリ協定に基づく30年の温室効果ガス削減を90年比40%と定めており、その達成に向けた再エネ、省エネ比率の目標の引き上げが焦点となっていた。省エネ目標は32.5%となる。

 

 現行の再エネ目標は、パリ協定前の2014年に合意したもので、協定との整合性がとれておらず、不十分とされてきた。ただ、各国で構成する閣僚理事会は既存電力会社等との調整を重視して30%への引き上げにとどめたい意向を強調。再エネ推進を求める欧州議会の35%案との間で、激しい対立が続いた。結果的に、両者の主張の中間をとる形で32%とした。

 

 省エネ目標は再エネ目標と連動する形で設定される。今回はそれに特別措置として0.5%分が加算され、省エネは32.5%が新たな目標となる。EUの再エネ目標はREDと呼ばれるEU指令(Renewable Energy Directive: RED)による法規制で、同指令に基づき各加盟国は国内法の整備を進めねばならない。省エネ目標はEED(エネルギー効率化指令)に基づく。いずれも、2023年に中間レビューを行う。

 

 目標引き上げに抵抗したのは、ドイツやポーランドなど石炭火力への依存比率が高い国々。特に、原子力廃止を進めている「ドイツのカベ」が大きかった。最終段階でもドイツは「32%以上の目標は受け入れられない」との立場を変えず、環境派の多い欧州議員は「32%では低過ぎる」と主張し、真っ向から対立した。だが、EUの政治リーダーであるドイツを突き動かすことはできなかった。

 

 議長国のブルガリアは、他のクリーンエネルギー政策との連動で、目標改正問題を着地させる形をとった。主な合意内容は、2輸送燃料については2030年までに少なくとも14%を再エネで賄うことを義務付ける。陸上輸送燃料の最終消費は7%を超えてはならない。

 

 また、第一世代バイオ燃料にも上限を設定した。先進的バイオ燃料とバイオガスについては、その比率を2025年までに少なくとも1%、2030年までに少なくとも3.5%にする目標を盛り込んだ。森林破壊の原因とされるパーム油は、段階的に廃止する。

 

 妥協によって対立をいったん棚上げし、実質的に推進できるものは合意で進めるというEUの知恵でもある。ただ、トランプ政権下での米国がパリ協定から離脱する中で、EUの推進力を強調しようとした環境派にとっては不満の残る決着となった。中間レビューの2023年までに改めて修正の交渉がされる可能性が高いという。

 

 欧州議会・グリーン党議員の Benedek Javor氏は「パリ協定の目標に沿った再エネ目標にするには、2023年のレビューが非常に重要だ」と説明している。しかし、中間レビューによる目標変更は法規制ではなく、努力的な目標に限られるとの指摘もある。今回の妥協では、EUがパリ協定の目標を達成するのは難しくなるとの批判も根強く残っている。

 

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-18-4229_en.htm