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オーストラリアの新首相、スコット・モリソン氏の気候変動政策へ懸念の声。石炭産業重視の「頑固屋」との評判(RIEF)

2018-08-25 15:10:20

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 オーストラリアの首相に、スコット・モリソン前財務相が就任した。2019年に予定される総選挙を前にして、自由党と保守党の現連立政権が前任のターンブル前自由党党首(前首相)では勝てないとして、党首・首相交代となった。同国の政治的混迷を象徴するが、新首相のモリソン氏は、石炭重視派として知られ、今後、同国の温暖化対策への影響が懸念される。

 

 モリソン氏は、2007年の総選挙で下院議員に初当選。移民・国境警備相などを経て2015年から財務相を務めていた。姓と名前の発音をとって、「スコモー」の愛称で知られる。カワイイ感じの愛称の一方で、政治スタンスは伝統的な保守で、かつ頑固な主張でも知られる。

 

 たとえば、移民・国境警備相時代には、中東などからの難民船を追い返す政策を実行し、人権団体から批判を浴びた。熱心な福音派キリスト教徒で、昨年末の同姓婚を法的に認める議会採決では与野党の大多数が賛成する中、採決を棄権した。

 

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 内外の環境派が警戒しているのは、同氏が石炭産業への理解が深い点だ。昨年2月、気候変動に関して国債の資金使途除外項目を設けることに疑念を示す発言をし、注目された。

 

 「気候変動を理由に、石炭事業に反対する人々が暮らす選挙区は、石炭産業で働き、生活している人々で成り立っている。これが石炭の現実だ」と演説した。その中で、石炭産業を非難する人々を「石炭へのイデオロギー主義であり、病的な人々だ」と強調、「石炭迫害者(Coalphobia)」とさえ指摘した。

 

 同氏は、「石炭はオーストラリア産業界の繁栄をもたらしたエネルギー競争力を(天から)与えられた利点だ」とも強調している。

 

 スコモーは就任したばかりなので、気候変動対策に関しての首相としての発言はまだない。だが、トランプ政権がパリ協定からの離脱宣言を受けて、米国内では石炭火力発電の復活とを掲げた政策を展開しているほか、ブラジルでも大統領候補に「温暖化懐疑派」が登場するなど、国際政治の舞台でも、化石燃料重視派の巻き返しが予断を許さない状況でもある。

 

 そうした中で、オーストラリアが気候変動対策を変更、ないし修正する機運が高まることへの警戒があがっている。国連支持の責任投資原則(PRI)のCEOを務めるFiona Reynolds氏はオーストラリアの出身でもある。Reynolds氏は「オーストラリアの気候変動政策には本当にがっかりする。先見性がないし、ビジョンもなく、政治的駆け引きだけ。だから私は、あそこに住みたくないのよ」とツィッターで指摘している。