HOME10.電力・エネルギー |経産省の大規模太陽光発電所の今年度1回目の入札、上限価格以下の応札がなく、落札ゼロに。昨年の制度開始以来、2回連続で不調。制度の機能性の不備を露呈(RIEF) |

経産省の大規模太陽光発電所の今年度1回目の入札、上限価格以下の応札がなく、落札ゼロに。昨年の制度開始以来、2回連続で不調。制度の機能性の不備を露呈(RIEF)

2018-09-05 23:50:35

solar9キャプチャ

 

 経済産業省が秋に予定していた新規大規模太陽光発電所(メガソーラー)の2018年度1回目の入札で、今夏実施した募集では落札事業者がゼロだったことが分かった。同省が設定した買い取り上限価格より低い価格で応札した事業者がなく、入札は成立しなかった。同制度は初年度の17年度も、応札量が募集量の3割に満たなかった。「機能しない制度」である疑念が高まった。

 

 経産省は2012年にスタートした再生可能エネルギー発電電力の固定価格買取制度制度(FIT)の買い取り価格が高すぎるとして、17年度から、出力2000kW以上の太陽光発電に限って、従来の固定価格買取りの対象から、入札制度に切り替えた。買取り価格を引き下げることで国民負担を軽減すると説明してきた。

 

 17年度の第一回の募集では、入札の募集発電容量50万kWに対して、応札数は9件で、入札発電容量は募集量を大きく下回る約14万1366kWにとどまった。初年度ということで事業者側も慣れていない面もあったが、今回の落札ゼロは、同省が設定した上限価格が高過ぎると評価されたことになる。http://rief-jp.org/ct4/74777

 

solar2キャプチャ

 

 経産省の委託で、入札業務を請け負っている一般社団法人低炭素投資促進機構は、今回の上限価格を昨年の1kw時当たり21円から5円50銭引き下げて15円50銭にしたという。その結果、事業者から9件の入札があったものの、最も低い価格でも16円47銭で、上限価格をクリアできず、応募企業はすべて落札できなかった。

 

 報道によると、経産省の担当者は今回の15円50銭の上限価格について「挑戦的だが採算は十分とれる水準」と説明している。同省の調査ではメガソーラーを含む事業用太陽光発電で、10円未満でも採算がとれる案件が100件以上ある、としている。しかし、入札に参加した事業者からは「ここまで経産省が価格を下げてくるのは想定外だった」との声もあったという。いずれにしても、役所の設定した上限価格が事業者の採算条件からすると、高過ぎたことになる。

 

 上限価格の問題だけでもない。すでに、これまでにメガソーラー案件はかなり開発されており、今後、大規模開発に適した用地の確保は難しくなりつつあることもある。新規の大型案件をとりまとめるために、多くの地権者との土地の買い上げ、借り上げ交渉などのコストアップ要因がある。

 

 また入札参加に高額な保証金を求められたり、発電所を建設しても、送電網に接続する際に、電力会社から高額な接続料を要求されるケースも少なくない。新規発電所の入札価格だけを調整しても、事業者は容易には動けない環境にあるわけだ。

 sonnetex1キャプチャ

 再エネ事業者の中には、新規で始めるのが難しくなりつつある国内の太陽光発電よりも、地熱やバイオマス発電などの他の再生エネ事業や、国内市場に早くも見切りをつけて、海外の太陽光発電への投資に軸足を移すところも出ている。

 

 これまでの経産省の再エネ政策は、FIT制度をいじっているだけで、新規参入事業者が電力需要者にたどり着くまでの総コストを軽減するインセンティブを与える仕組みになっていない。再エネコストを電力使用者が負担する賦課金に転嫁するだけでなく、全体のコスト削減のためには、電力網への接続料の軽減策も検討課題だろう。

 

 同省は、7月にまとめた新しいエネルギー基本計画で再エネを主力電源化する姿勢を打ち出した。しかし、それを実現するための政策が、機能しないようでは目標の達成は難しい。「経産省は原子力政策に依然、重点を置いており、CO2削減では競合する再エネは本気で進めたくない」との疑念も消えない。

 

 開始以来、2度の不調にもかかわらず、同省は、同じ仕組みのまま、18年度下半期にも3回目の入札を実施するという。機能しない制度は、早急に改革するのが基本だ。そうせず、漫然と不調を繰り返し続けるのは、行政の怠慢としか言いようがない。

 

http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/index.html

http://www.teitanso.or.jp/fit_top