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九州電力、太陽光発電事業者への7時間の出力制御を初実施。14日も継続。国の再エネ政策と、既存電力網の制御力のギャップ露呈。電力網の分散化、公的蓄電設備の整備等、抜本改革が必要(RIEF)

2018-10-13 13:25:16

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  九州電力は13日、太陽光発電の一部の事業者を対象に、発電を一時停止を指示する「出力制御」を実施した。対象地域は、熊本県を除く九州6県。離島以外での出力制御は全国初。電力の供給が需要を上回り、需給バランスが崩れて大規模停電に陥るのを回避するためとしている。14日も実施する方針。国の再エネ政策と既存電力網の制御力のギャップが明らかになった形で、国全体の電力網のあり方の見直しが必要だ。

 

 九電によると、13日の九州は晴天で太陽光発電が増える一方、気温の低下で家庭等の冷房利用が減るほか、休日で工場などの稼働も少ないため電力需要は伸びない見通し。そうなると、電力が余って供給が不安定になり、大規模停電につながるリスクがあるとして、出力制御に踏み切ったという。

 

 出力制御は午前9時から午後4時までの7時間の予定で始まった。九電管内には、送配電の接続契約を結んでいる太陽光発電事業は約2万4000件あるが、このうち、9759件の計43万kW分に出力制御を要請した。一般住宅の屋根などに設置されている出力10kW未満のものは対象外。制御は、再エネを管理する専用システムを通じ、遠隔制御で電力が送電網に流れないようにした。

 

 

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 九電は、13日について、太陽光が最も多く発電する正午からの30分間は、供給が需要を465万kW分上回ると見込んだ。そのため、まず出力調整をしやすい火力発電所をいくつか停止したほか、需給ギャップを埋めるために196万kWを他の地域に送電、余剰電気を揚水式発電や蓄電池利用等で226万kW分を吸収する等の措置を講じた。それでもギャップを解消できないので、合計43万kW分の制御を実施した。

 

 13日の管内の電力の使用率(現在供給力に対する使用量の比率)は、最大で91%、13時現在で64%にとどまっている。九電の予想では、14日だけでなく、来週もほとんど毎日が63~65%台の使用率で推移すると見通している。来週以降も出力制御が続く可能性もある。

 

 九電は、今回の出力制御は管内で再エネ電力の供給力が高まったことが原因としているが、一方でこの夏までに管内の原発4基(計414万kW)が再稼働したことも電力の供給力を高めた。しかし、経済産業省が定めたルールでは、原発の稼働は優先され、出力制御の対象にはならない。

 

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 太陽光発電等の再エネ発電は、国が2012年に導入した固定価格買取制度(FIT)で売却価格を固定して普及を促進してきた。一方で送電網の整備は十分に「再エネ対応」となっておらず、各地で接続問題を引き起こしている。今回の出力制御は、国による再エネ普及政策と電力網の整備政策が不整合のままで、その対応不足を再エネ業者に負わせる形となった。

 

 金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)報告は、低炭素経済への移行によって政策規制の導入や政策の不整合によるリスクが高まる「移行リスク」を指摘しているが、まさにそのリスクが顕在化したことになる。

 

 だが、温暖化対策を進めるうえで再エネ投資は欠かせない。このままだと既存電力会社の送電網のキャパシティが再エネ電力許容の「上限」になってしまうリスクもある。再エネ普及と電力の安定供給の両政策を両立させるためには、今後、電力網を地域分散型にするほか、公的な蓄電設備の普及等、国全体の電力網を、低炭素経済対応型に抜本転換する必要がある。

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