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チリ政府と産業界、CCS無し石炭火力発電所の漸進的廃止で合意。再エネ電力のコスト低下が好影響。エネルギー省が円卓会議で国民合意形成へ。どこかの国とは大違い(RIEF)

2019-01-07 08:59:01

Chile1キャプチャ

 

 チリのエネルギー省と産業界は、石炭火力発電所を漸進的に廃止するプログラムの策定で合意した。パリ協定の国際公約を達成するため、CCS(カーボン回収貯留)施設を備えない石炭火力発電所の全廃を目指す。同省と産業界はこの半年間にわたって9回もの円卓会議を重ねて合意に至った。

 

 現在、チリの発電量のうち40%は石炭を燃料とした発電によって占められている。このため一気に石炭火力離れを進めると経済への影響が大きいと判断、今後、石炭等の化石燃料発電から再生可能エネルギー発電への移行を進めるうえでの経済的影響のほか、雇用や電力システムの効率性へのインパクト等を慎重に分析しながら、進めていくことで合意した。

 

 エネルギー省が開いた円卓会議には、産業界だけでなく、電力会社、労働組合、市民団体、消費者団体、学界その他のステークホルダーが参加。それぞれが脱炭素化のために必要な対策についての研究成果や提案等を議論するとともに、ドイツや英国など多国の経験の詳細な分析も俎上にあげて議論を積み重ねてきた。

 

 チリ政府は1年前の2018年1月に、国内で電力事業を展開する大手のAES Gener、 Colbun、 Enel、Engieの各社 で構成する電力協会 Associaion de Genradorasとの協議で、CCSなしの石炭火力発電所を各電力会社が廃止することで合意していた。

 

 電力業界が石炭火力廃止で合意した背景には、同国での電力入札において、再エネ電力が極めて低コストで調達できるということも、電力会社にとってはエネルギー転換を容易にさせる利点になっているとされる。世界経済フォーラムによると、チリは、オーストラリア、ブラジル、メキシコなどとともに、太陽光発電の発電コストが石炭火力よりも低下している国の一つに数えられている。http://rief-jp.org/ct4/67141

 

 またチリ政府は、パリ協定の国別削減目標を達成するために、2050年までに電力量の70%を再エネでまかなう国家目標を立てている。電力業界にとっては、この政府目標を踏まえ、発電コストの”高い”石炭火力に依存するよりも、再エネを主力電源化するための政策転換に自らもコミットするほうが得策と判断したとみられる。

 

 電力業界の対応に加えて、国全体でエネルギー政策のあり様を議論したうえで選択するため、エネルギー省は自ら円卓会議を主宰して議論を重ねてきた。既存の電力システム死守で、形だけの公聴会を開いてお茶を濁し、さらに再エネ電力の育成を阻むような政策を続けている、どこかの国のエネルギー担当官庁と大違い、と言わざるを得ない。

 

 電力会社はコストが”高く”、温暖化訴訟リスクもある石炭火力発電に拘るよりも、再エネ発電の新たな設備投資や不要な化石燃料設備の償却を早急に進め、そうした転換に対する政府の支援や国民の理解を得るほうが、長期的にみて望ましい経営につながると判断したとみられる。

 

 今後、石炭火力廃止のタイムテーブルの作成と、漸進的なフェーズアウトプランを進めるうえでの必要な条件等を詰めることで、さらに電力業界と調整していくことになる。

http://ieefa.org/chile-launches-coal-phase-out-initiative/