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経産省、風力発電事業全体を入札制に切り替え。2021年度以降。風力発電の普及率1%以下にもかかわらず。普及よりコスト是正を優先(各紙)

2019-01-13 18:37:17

windキャプチャ

 

 各紙の報道によると、経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の対象としている風力発電事業について、2021年度以降、全面的に入札制に切り替える。17日に開く同制度についての有識者会議で方針を示すとしている。わが国の風力発電コストが高止まり構造を是正するためという。

 

 日本経済新聞等が報じた。現行のFIT制度は、固定価格の買い取り価格で再エネ事業者から電力を購入する仕組みだ。事業者の「収入保障」をすることで、事業参入を促進することを重視している。ただ、その分、発電コストの引き下げが十分に進まないという課題がある。

 

 現在のFITによる19年度の買取価格は陸上風力が1kW時当たり19円で、洋上風力は同36円。これまで洋上風力は一部案件で入札制を導入する方向を示していた。今回の方針は、現行FIT法を見直して、21年度以降は全面的に入札制を導入するという。

 

 日本の風力発電の普及は、電力全体の0.6%と1%にも達しておらず、FIT制度の政策効果が出ているとは言えない状況が続いている。しかし、経産省は同制度による買取費用が電力利用者の電力料金に反映されることから、コスト削減を重視する路線に切り替えるとみられる。

 

 日本の直近の風力発電コストは1kW時当たり13.9円で、世界平均(8.8円)の約1.6倍の水準という。すでに太陽光発電については、総出力が2MW以上の案件を対象に、2017年4月から入札制度を導入、これまでに3回の入札を実施している。

 

 週明け17日に開く同省の有識者会議で、風力発電への「入札制早期導入」の方針を示す予定。入札制度では、国が風力発電での買取募集量と買取価格の上限(供給価格上限額)を決め、売電の希望価格を事業者から募る方式をとる。現行の太陽光発電の入札制度と同様にする。

 

 入札の募集では、予定した上限額より安い電力価格を示した事業者から順番に買取契約を結ぶ。このため、事業者は契約を得るためには、他社より安い価格を提示する必要が生じる。入札による買取価格は現行FITの固定価格買取額と同様、電気代に上乗せされ、消費者負担となる。

 

 同省では、現在、大規模発電に限って入札制を導入している太陽光発電についても対象を広げて、再生エネ電力全体のコスト低下を促す、としている。ただ、温暖化対策の柱でもあるわが国の再エネ電力の普及率は、大規模水力ダムなどを含めても16%にとどまっている。パリ協定での国別公約目標では、2030年度に再エネ全体の比率を22~24%まで高めるとの目標を掲げているが、現状の普及率では達成が厳しい状況にある。

 

 再エネ事業者は、買取価格だけではなく、既存電力会社の送配電網に接続するための接続料金の負担も求められている。地域によっては膨大な接続料を科せられるケースもある。再エネ発電のコスト削減と、再エネ普及という二つの政策目標を達成するためには、入札制度の導入に加えて、接続問題の抜本解消を、経産省が打ち出せるか、という点にかかっている。

 

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190113&ng=DGKKZO39975400S9A110C1MM8000