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環境NGO11団体、住友商事が推進するベトナムでの超臨界石炭火力発電事業(SC)へ、国際協力銀行等が支援することを政府に抗議する要請書提出(RIEF)

2019-02-15 07:42:50

JBIC1キャプチャ

 

 国内の環境NOG11団体は、住友商事がベトナムで建設計画中の石炭火力発電所事業に対して、日本の公的金融機関の国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)がそれぞれ融資と、保証を付与することに抗議する要請書を政府に提出した。同事業はOECDの公的輸出信用アレンジメント(OECDルール)を曲解するもの、と批判している。

 

 また要請書は、同計画に融資参加するとみられる三井住友銀行等の3メガバンクのCEOにも送付された。

 

 住友商事が推進する「ベトナム・バンフォン1石炭火力発電事業」は、カインホア省ニンホアのニンフックコミューンに、2基の660MWの超臨界圧石炭火力発電所(SC)を建設する計画。住友商事が出資する同事業に対し、JBICが融資を、NEXIが付保を検討中。現地の報道では、三井住友銀のほか、三菱UFJ銀行、みずほ銀行の3メガバンクが融資する可能性を指摘している。

 

 OECDルールでは、500MW超の石炭火力発電所に対して、OECD加盟国の政府支援を制限している。やむを得ず、公的信用給付をする場合の条件としては①超々臨界圧(USC)もしくは、②温室効果ガスの排出が750g CO2/kWh未満の石炭火力についてのみ、としている。

 

 環境NGOらは、このOECDルールに照らすと、500MWを超える超臨界圧石炭火力(SC)のバンフォン発電所は、ルールに違反し、公的支援の対象にならない、と指摘。日本政府に対して、JBICとNEXIによる金融支援を停止するよう要請した。

 


 住商の事業が推進されているのは、OECDルールには移行期間対処措置として、2017年1月1日よりも以前に「技術フィージビリティスタディーおよび環境影響評価が完了」し、迅速に申請手続きがなされたものに限り、例外を認めているため、とされる。



 この点についてNGOらは、バンフォン石炭火力事業の最初のESIA(環境・社会アセスメント)は2011年に完了し、その後2015年に改訂されたが、最新のESIAが完了したのは2017年11月。この最新のESIAは古いものに比べて2倍の分量があり、NGOは「2017年以前に行われたESIAをもって、移行期間の例外要件を満たした、とは言えない」と指摘している。

 


 また、最初のESIAの完成は8年前。その改訂版も4年前の2015年で、計画当初から今回の支援検討開始までに相当な時間の差がある。従って、NGOらは、こうした時間のギャップは、移行期間の例外要件である「迅速に対応された」案件に該当しない、と否定している。



 さらにNGOらは、「JBICとNEXIは低効率かつ温室効果ガスの排出量の多い発電所に対する支援を制限するOECDルールを、曲解しようとしている」と、国の公的金融機関のあり方を強く批判している。


 バンフォン1石炭火力発電事業では、OECDルール違反問題に加え、建設地の地元で、様々な環境社会・人権面での影響が懸念されている。地元住民らは石炭灰の処理や温排水が湾内の生態系に及ぼす影響を懸念している。事業対象地から移転を迫られた住民の生計回復が十分でないとの指摘も出ている。


 環境NGOは、「(日本の石炭火力の内外での推進体制は)気温上昇を産業革命以前に比べ2℃未満に抑え、1.5℃以下に抑える努力を求めたパリ協定と矛盾する」としている。

 

 来日中の前国連気候変動枠組協会事務局長のクリスティアナ・フィゲレス氏も「日本が、石炭火力しかエネルギーのオプションがない場合は仕方がない。だが(日本は)そうではない」と懸念を表明した。http://rief-jp.org/ct8/86952

 

 同氏は、日本が国内で新規の石炭火力建設計画を30件以上認め、石炭火力の海外輸出を”国策化”している状況を踏まえ、「日本の行動は世界から見ると、容認不可と言わざるを得ない。日本は気候変動の影響で今後、ますます災害に対して脆弱な国になっていく。日本がこれからも石炭火力を推進したり、海外にも輸出したりし続けることは、日本の評判が国際的に傷つき、金融的にもリスクとなる」と警告している。

 

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/vp/pdf/190214.pdf