HOME |英国輸出信用保証庁(UKEF)、低中所得途上国向け化石燃料事業に5年で3300億円ファイナンス。メイ政権の「2050年国内ゼロミッション目標」と整合せず。英超党派議会委員会が報告書(RIEF) |

英国輸出信用保証庁(UKEF)、低中所得途上国向け化石燃料事業に5年で3300億円ファイナンス。メイ政権の「2050年国内ゼロミッション目標」と整合せず。英超党派議会委員会が報告書(RIEF)

2019-06-18 08:33:13

UKfireキャプチャ

 

  英国のメイ政権は2050年の温室効果ガス排出量ゼロ目標を打ち出したが、一方で、低中所得途上国での石炭火力発電事業等に英国輸出信用保証庁(UKEF)が過去5年間で24億ポンド(約3300億円)の資金支援をしていたことが英議会の環境監視委員会報告書で指摘された。国内のカーボンゼロ政策の裏で、途上国でカーボン排出増を引き起こしていては、「カーボンニュートラル」目標も色褪せる。http://rief-jp.org/ct8/90636?ctid=71

 

 ただ、こうした調査が議会の委員会報告として公表される点に、英国では、まだ政策チェック機能が働いていることを示す。どこかの国とは政治の力量が異なるようだ。

 

 報告書は日本の国際協力銀行(JBIC)に相当する「UK Export Finance(UKEP)」の活動を、与野党の委員(16人)で構成する環境監査委員会が調査・分析し、とりまとめた。委員会は保守党8人、労働党6人、緑の党1人、スコットランド国民党1人で構成。

 

UKEP3キャプチャ

 

 報告書を踏まえ、同委員会のMary Creagh委員長(労働党)は「政府は英国が気候変動への挑戦で世界のリーダーだ、と主張する。しかし、見えないところで、UKEPの輸出ファイナンススキームは、納税者のお金を貧しい途上国での化石燃料事業に投じている」と批判している。

 

 報告書によると、UKEFは2013年4月からの5年間で、総額26億ポンドを海外でのエネルギー事業支援に投じた。そのうち大半の90%相当の24億ポンドを、低中所得国向けの化石燃料発電事業等のファイナンス支援に使った。一方、再生可能エネルギー向け事業は、2017~18年に96%が先進国向けとされ、低中所得途上国向けは0.6 %でしかなかった。

 

 明らかにUKEPの資金支援は、途上国向けは化石燃料、先進国向けは再エネ事業と色分けしている、と報告書は指摘している。委員会は、こうしたUKEPの活動は温室効果ガス排出を削減する国の努力と一致しないばかりか、化石燃料融資がストランデッドアセット(座礁資産)化するリスクを、納税者に負わせることになる、と批判している。

 

 報告書は、UKEPと対照的な輸出支援の活動としてスウェーデンの輸出信用機関(SEK)を例示している。SEKは途上国向けの化石燃料事業へのファイナンスは5%以上にはしないという「キャップ(上限規制)」を設けている。実際には2018年の運用状況は1%以内だったという。これに対し、UKEPは20%近くが化石燃料向けファイナンスだった。

 

 再エネ向けファイナンスでもUKEPは他のG20諸国の輸出信用機関とは対照的な活動をしているという。2013年から15年にかけてのG20の輸出信用機関のエネルギーポートフォリオに占める再エネ比率は、平均7%。これに対して、UKEPはわずか0.3–0.5%でしかなかった。

 

 委員会はUKEPに対して、2021年までに化石燃料事業への投資支援を終了させるよう勧告した。さらに最低でも、スウェーデンのSECのように、融資に化石燃料関連は全体の融資に占める比率を5%以内にとどめるキャップをかけ、最終的には2050年ゼロエミッションの目標と合致させるべきだ、と提言している。

https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmenvaud/1804/180403.htm

https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmenvaud/1804/1804.pdf