HOME13 原発 |EU欧州委員会のタクソノミー報告、原発を「グリーン事業」から除外の理由として、高放射性廃棄物処理体制の未確立を指摘。原発の温暖化対策貢献の議論を一蹴(RIEF) |

EU欧州委員会のタクソノミー報告、原発を「グリーン事業」から除外の理由として、高放射性廃棄物処理体制の未確立を指摘。原発の温暖化対策貢献の議論を一蹴(RIEF)

2019-06-24 09:01:30

フィンランドが建設を進める使用済核燃料廃棄物のオンカロ最終処分場

 

 EU欧州委員会の技術専門家グループ(TEG)は先にサステナブルファイナンスのタクソノミー報告を公表したが、その中で、原子力発電所を対象から除外した評価が話題になっている。原発については、国際原子力機関(IAEA)等が発電中に温室効果ガス発生量がゼロである点を強調し、温暖化対策に資する手段とアピールしているが、TEGレポートは「高放射性廃棄物(HLW)を安全、長期に保存する場所が世界中どこにもない」と指摘した。

 

 (写真は、フィンランドが開発を進める原発の使用済み核燃料のオンカロ最終処分場)

 

 先週、6月18日に公表されたTEGのタクソノミーレポートは、気候変動の回避策(Mitigation)として7セクター67業種、適応策(Adaptation)として5セクター9業種を、それぞれグリーン&サステナブル事業として整理している。http://rief-jp.org/ct4/90824?ctid=71

 

EUTaxonomy1キャプチャ

 

 事業分類のテンプレートでは、こうした回避・適応策のクライテリアとして「原則」「基準」「閾値」の3項目を設定するとともに、「他の環境分野に重要な害を及ぼさない評価(Do no Significant harm assessment:DNSH)」の基準も設定している。

 

 このDNSH原則は、回避策事業の場合、他の環境分野として「適応策」「水・海洋資源」「サーキュラーエコノミー」「汚染防止・抑制」「健全なエコシステム」の5分野を提示している。

 

 レポートは原子力エネルギーについて、発電段階でほぼ温室効果ガス排出量がゼロに近く、気候回避策としての観点からは、原子力エネルギーは正当化される、と、まず指摘している。

 

 そのうえで、DNSHの視点から、原発から排出される使用済核燃料等の高放射性廃棄物(HLW)の長期的なマネジメントに言及。現在の非持続可能な状況を安全で長期的な技術力で、改善する必要性があるという国際的コンセンサスの存在を強調した。

 

 そうした状況改善の努力が現在、複数の国で行われていると認めたうえで、「しかし、現状は、そうしたことが実行可能で、安全で、長期的に地下の貯蔵システムが確立されているところは、世界のどこにもない」と結論付けた。

 

 これまでグリーンボンドの資金使途では、国際的なグリーンボンド原則(GBP)などが、原子力、石炭火力発電、大規模ダムの3業種を「除外」してきたが、明確な理由を付記はしてこなかった。今回のTEGレポートの指摘は、原発の長期廃棄物対策が確立しない限り、原発の温暖化貢献効果はあるとしても、地球環境にプラスではない、と明確化したことになる。原発を「グリーン」と認定しない「理由のある否定」といえる。

                     (藤井良広)

 

https://ec.europa.eu/info/publications/sustainable-finance-teg-taxonomy_en