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岡山・美作市の太陽光発電所対象「事業用パネル課税」条例案に、太陽光発電協会(JPEA)が、反対の声明書公表。事業者の二重負担と再エネ普及の阻害要因に(RIEF)

2019-06-24 13:19:27

mimasaku1キャプチャ

 

   太陽光発電事業者で構成する太陽光発電協会(JPEA)は、一部の自治体で設置した太陽光発電パネルの面積に応じて法定外目的税を課税する動きが出ていることを受け、そうした動きの広がりに反対する声明をまとめた。現在、岡山県美作市が条例案を議会に提出、審議中。JPEAはそうした法定外目的税の課税は、太陽光発電事業者にとって二重の税負担となると指摘している。

 

 (写真は、美作市のゴルフ場跡地に建設されたパシフィコ・エナジー社のメガソーラー施設)

 

 美作市は今年2月、市民代表らで構成する市総合戦略推進会議に新税導入案を諮問し、4月に同会議から「おおむね妥当」との答申を得て、萩原誠司市長に提出されている。こうした意見を踏まえて 今年5月、市内に設立されている事業用太陽光発電所に対して、設置した太陽光発電パネルの面積に応じて法定外目的税を課税する「事業用発電パネル税」の導入を求める条例案を提出した。

 

 同市内で事業用として届出がある太陽光発電施設は約180ヶ所。これに対してパネル1㎡当たり50円を課税する考え。単純に集計すると年間9400万円の税収を確保できる。今後の新規建設分にも適用する。同市では税収額を市内の自然環境の保全や防災対策などに充てる方針という。税の在り方は5年ごとに見直す。

 

萩原誠司・美作市長
萩原誠司・美作市長

 

 市内では、現在、作東地域で全国最大級の大規模施設(約400ha)が今秋稼働予定となっているのをはじめ、ゴルフ場跡地などに発電所の立地が相次いでいる。このため、同市は新たな財源の確保と、こうした発電所で大規模災害が発生すれば市の財政負担が懸念されることへの備えとしても新規課税が必要と判断した。

 

 地方税法では、自治体が行政課題の解決や自主財源確保のため、総務大臣の同意を得て、独自に税を創出できることを定めている。このうち特定の使途にのみ税収を充てることができるのが法定外目的税。

 

 同市の動きに危機感を高めたのがJPEA。こうした法定外目的税が同市に導入されると、太陽光発電所は全国に点在するので、他の自治体にも同様の新税設立の動きが波及する恐れがある。そうなると現在、太陽光発電の固定価格買取り制度(FIT)の制度見直しなどに直面している同事業の長期安定稼働、主力電源化に影響が及ぶと懸念を示している。

 

 JPEAは、声明で反対理由として、①太陽光発電事業者にとって法人事業税や固定資産税に加えて新税は二重の税負担となり、新規投資や事業継続意欲に影響する②太陽光発電だけに課税すると、他の発電事業との公平性が失われる③既存設備事業者にとって事業後の課税は借入金の返済計画等に影響する④FIT価格が下がる中での税負担は自立化を目指す事業者の採算性に大きな影響を及ぼす⑤FIT買取り終了後の長期安定稼動の妨げになる恐れがあるーー等をあげている。

 

  JPEAは美作市が提案しているパネル1㎡当たり50円の税負担だと、1kWh当たりの売電収入に対して、約0.3円の税負担となり、2019年度の事業用太陽光発電事業(500kW未満)の買取り価格1kWH当たり14円の場合、売電収入の2%が新たな税負担になるという。さらに買取り価格が今後下がれば、売電収入が減るが、パネルへの課税は一律なので、税負担割合は増大することになる。

 

 JPEAは、2050年における国内の太陽光発電の稼働設備容量200GW(電源構成の20%程度)に拡大する目標を掲げている。目標達成のためには、いち早くFITからの自立化を進め、少なくとも年間5GWの導入と、再投資による長期安定稼働が不可欠としており、今回の法定外目的税は、目標達成の妨げになると批判している。

http://www.city.mimasaka.lg.jp/

http://www.jpea.gr.jp/topics/190620.html