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英国、10月から家庭用蓄電システムの付加価値税率を5%から20%に引き上げ。「2050年カーボンニュートラル」の政府政策に逆行するも、EUルールへの適合を優先と説明(RIEF)

2019-06-25 14:52:32

UKSOlar2キャプチャ

 

 英国のメイ政権は、2050年に温室効果ガス排出量をネットゼロとするカーボンニュートラル策を打ち出したが、一般家庭の屋根置き太陽光発電用の蓄電システムへの課税をめぐり、「ブレグジット問題」が浮上している。英財務省が10月から、蓄電システムへのVAT(付加価値税)率を、EUのルールに基づいて、現行の5%から20%に引き上げる提案をしているためだ。

 

 再生可能エネルギー普及を目指すRenewable Energy Association(REA)などは、家庭用蓄電システムの増税は、首相が掲げる「カーボンニュートラル政策」 の推進の意図に反する、と批判している。しかも、今回の増税対象では、家庭用石炭への軽減税率(5%)はそのままで据え置かれることから、「政策の整合性がとれていない」と反発を招いている。http://rief-jp.org/ct8/90636?ctid=71

 

 実は、増税提案の財務省も困惑しているという。今回の増税案は「ブレグジット」と密接に関連しているからだ。2015年の欧州司法裁判所が、エネルギー蓄電システム等は、減税の恩恵を受けるべきではない、との判決を出している。このため、英国のVAT対象でも蓄電システムを含む太陽光発電設備を新築住宅に設置する場合は、22016年から税率は他の製品と同様に、20%に引き上げられている。

 

REAが進める増税反対キャンペーン
REAが進める増税反対キャンペーン

 

 今回の増税案は、既存住宅に後付けで設置した太陽光発電に家庭用蓄電システムを加える場合にも、20%の税率が適用されることになる。英国では古い家が多く、既存住宅への太陽光発電設置が大半。蓄電システムは太陽光発電の魅力を高める付加設備となっている。年齢60歳以上の住宅保有者等の場合は例外とし従来どおりの5%の軽減課税の適用を受けることが出来る。

 

 REAは、英国がEUから離脱するブレグジットを進めているのに、EUの裁判所の判決に縛られるのはおかしい、と主張。今回の増税措置はブレグジット後は直ちに廃止されるべき、との署名活動を展開している。この提案には、すでに1万1000以上の支持が表明されている。

 

 RENのCEOであるNina Skorupska氏は「今回の蓄電システムへの増税の提案は、気候変動対応に取り組もうとする英国の家庭やビジネスにとって、障壁を築くようなものだ。政府が本来するべきことは、こうした障壁を作り出すことではなく、蓄電システム等の技術導入を促すことだ」と指摘している。

 

 英国内で太陽光発電等の再エネ普及活動を進める「Good Energy」のCEO、Juliet Davenport氏は「気候変動対策の緊急性への対応としては最悪の方法だ。財務省は、自ら温暖化対策に協力しようと、自宅に太陽光発電設備を自費で設置し、しようとしている多くの国民の声を聞くべきだ」と語り、「EUの裁判所が決めたから仕方がない」と首をすくめる英国の官僚主義に対しても強く批判している。

https://www.theguardian.com/politics/2019/jun/24/hmrc-pushes-massive-vat-increase-for-new-solar-battery-systems

https://www.r-e-a.net/news