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チェルノブイリ原発、収納シェルター完成後の整備終えて、ウクライナに移管。事故後33年、これから原子炉解体、放射性汚染物質処理に着手。100年がかりか(RIEF)

2019-07-12 08:04:02

チェルノブイリ原発4号機の解体作業開始の式典に参加したウクライナのゼレンスキー大統領

  旧ソ連時代の1986年に爆発事故を起こし放射性物質をまき散らしたチェルノブイリ原発4号機が、ようやく解体作業に移行する。10日、4号機を覆うシェルター内部でウクライナのゼレンスキー大統領も出席してウクライナの原子力機関への移管(Handover)のための式典が開かれた。事故後33年を経て、やっと事故原発の処理に取り掛かる準備ができたというところだ。

 

   (写真は、チェルノブイリ原発の移管式典に出席したゼレンスキー・ウクライナ大統領)

 

 事故原発は、安全対策のためのシェルターづくりを担当してきた欧州復興開発銀行(EBRD)から、ウクライナの「Chernobyl Nuclear Power Plant administration」に移管される。セレモニーには、ウクライナ大統領のほか、鋼鉄製のシェルターづくりを主導してきたEBRDの幹部も多数出席した。

 

完成したチェルノブイリの「格納庫」
完成したチェルノブイリの「格納庫」

 

 ゼレンスキー大統領は、原発周辺を観光地として発展させることを目指す大統領令に署名。ウクライナの負の象徴であるチェルノブイリを国家発展の地に変容させていくと強調。「人災による大事故後、本物の廃虚の町がある地球上で唯一の場所を世界に示していかなければならない」と訴えた。

 

 EBRDの原子力安全局長のBalthasar Lindauer氏は「新しい格納設備の完成を誇りに思う。ウクライナが新たなマイルストーンに辿り着いたことを祝福したい」と語った。実際には、原子炉解体、高放射能汚染物質の処理等、これからが本格的な対策になるともいえる。

 

 原子炉の爆発事故を起こした同原発は事故後に、緊急にコンクリートで原発全体を固める「石棺化」措置をとった。だが、強い放射線と応急対応のためコンクリートが経年劣化で随所で亀裂が入り、危険な状態になっていた。このため、2010年から6年がかりで、世界45カ国(日本を含む)の国際支援で、総額21億ユーロ(約2625億円)の費用を投じ、鋼鉄製のシェルターで原発全体をすっぽり覆った。http://rief-jp.org/ct4/66065

 

新格納庫の内部。石棺を鋼鉄製フレーム等で支えている
新格納庫の内部。石棺を鋼鉄製フレーム等で支えている

 

 シェルターはそれまでの「石棺」から「新安全封じ込め庫(New Safe Confinement)」との名で呼ばれている。幅250m、長さ162m、高さ108mという巨大構造物の全重量は3万6000㌧。原発内部の原子炉では核燃料が溶融し、高放射能に汚染された200㌧を上回る残骸が手つかずのままのため、シェルター全体は密閉されている。

 

 2016年のシェルター完成後、当初は17年にもウクライナ側に移管する予定だった。だが、シェルター内部の石棺の崩壊リスクや高濃度放射線遮断の対策等で2年近く遅れた。鋼鉄製のシェルターは、100年は持つという。逆にいうと、解体処理に今後100年はかかるということかもしれない。それも計算上のことだが。http://rief-jp.org/ct13/78967

 

 溶融した原子炉を安全に解体するのは、東京電力福島第一原発の抱える課題と同じ。いずれも、人類がこれまでに経験したことのない挑戦だ。ぜひ、日本とウクライナの技術交流を深めて、双方の作業が進捗するように協力してもらいたい。

 

  https://www.ebrd.com/what-we-do/sectors/nuclear-safety/chernobyl-decommissioning-power-plant.html