経済産業省、再エネ推進の固定価格買取り制度(FIT)廃止へ。2020年度にも法改正。5日の総合資源エネ調査会で方針示す(各紙)
2019-08-05 11:39:49
各紙の報道によると、経済産業省は太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電を支援するために実施している固定価格買取り制度(FIT)を、廃止する方針を固めた。2020年度にも関連法を改正するという。FITに代わる再エネ普及の新たな制度を導入する、としており、5日に開く総合資源エネルギー調査会省委員会で代替案等について議論する予定。
日本経済新聞や朝日新聞等が報道した。今秋に改正案の詳細を詰め、来年の通常国会にも改正法案を提出するとしている。
FIT制度は、東京電力福島第一原発事故後の2012年に、導入された。当時の民主党政権は、原発に代わる再エネ発電奨励を目指した。再エネ発電事業者に対して発電電力を固定価格で買取る仕組みのため、太陽光発電を中心として多くの新規参入業者が殺到した。
ただ、業者からの電力の買取り価格は、電気使用者から集める賦課金で賄われる仕組みのため、家庭や企業が支払う賦課金が2019年度には約2兆4000億円になるなど、使用者負担が大きいとして、経産省は制度の見直しを検討してきた。自民党政権からも、旧民主党政権時代の政策なので修正・廃止を求める動きがあったとされる。
報道によると、5日の総合資源エネルギー調査会に提案されるFIT見直しの中間整理案では、大規模な太陽光発電や風力発電の発電コストが「技術革新などを通じて着実に低減している」と指摘している。FITに代わる新たな制度については「再エネ事業者自らが販売先を見つけたり、電力卸売り市場で売ったりすることを求め、その代わりに、『投資回収について一定の予見性を確保できる仕組み』を目指す」としている。
電力卸売市場で電力価格が急落して基準価格を下回った場合に、国がその分を補填する仕組みなどが有力、としている。新制度への切り替えは、「電源ごとの案件の形成状況をみながら」としており、普及の進んでいる太陽光発電から先に適用する方針という。対象は新規の事業となり、既存のFIT適用案件は従来どおりの条件で発電ができる。
また家庭用や中小企業などの小規模な事業用太陽光発電や、地熱、バイオマス発電などについては、現行の買取り制度の基本的な枠組みを維持する一方で、小規模太陽光発電については「自家消費を優先的に評価する仕組み」にするとした。自家消費後の余剰電力だけを買い取る制度にして、消費者が負担する賦課金コストを削減する考えのようだ。
経産省は、FIT制度の対象となる太陽光発電については、制度発足後、毎年、買取り価格を引き下げるほか、入札制の導入等、制度見直しを進めてきた。ただ、今回、国が打ち出している再エネ比率を2030年度に22~24%に引き上げる目標は、欧州などの先進国に比べて、見劣りしている。発電対策だけでなく、送配電網の整備は既存の電力会社まかせで、新規事業者にとって不利な状況が続いている。
2050年温室効果ガス排出量80%削減の長期目標を達成するうえにおいて、再エネ政策の一層の推進が求められる中で、新制度が従来のFIT以上に推進とコスト負担の両立ができるのかが、問われる。
https://digital.asahi.com/articles/ASM8531X4M85ULFA001.html
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_change_other.html