HOME10.電力・エネルギー |英国の石炭火力発電所、新たに1基の閉鎖決まる。残りは4基のみ。2025年までに「石炭火力ゼロ」へ、秒読み体制。産業革命発祥の地で、石炭火力の火が消えていく(RIEF) |

英国の石炭火力発電所、新たに1基の閉鎖決まる。残りは4基のみ。2025年までに「石炭火力ゼロ」へ、秒読み体制。産業革命発祥の地で、石炭火力の火が消えていく(RIEF)

2019-08-06 18:19:58

RWE1キャプチャ

 

 ドイツのエネルギー大手のRWEは、英国で操業している同社所有の石炭火力発電所を、2020年3月末までに閉鎖すると公表した。これで同社の英国での石炭火力はゼロとなる。英国全体の石炭火力は残り4基。電力消費量に占める割合はすでに5%を切っている。英政府は2025年には石炭火力ゼロを実現する予定。石炭火力は英国発祥の産業革命の象徴で、大英帝国発展の土台となってきた。その英国で石炭ゼロが現実化することは、歴史の変化が確実に進んでいることを示す。

 

 (写真は、来年3月末に閉鎖が決まった英ウェールズのAberthaw B発電所)

 

 英国の「石炭火力ゼロ」への道は、先進国のエネルギー政策の転換をも告げる。同国はこれまで、日本と同様に複数のエネルギー源をバランスさせる「エネルギーミックス政策」の立場とされてきた。しかし、石炭は英国の主要エネルギー源の座から完全にはずれることになり、今も変わらず石炭固執の日本との違いは鮮明になる。

 

 RWEが閉鎖するのは、南ウェールズにあるAberthaw B発電所。これまで約50年間、操業してきた。 英国では、仏EDFも2月に、イングランドのノッティンガムシャー州コッタムで操業中の石炭火力発電所を9月末に閉鎖することを決めている。このため、操業を続けている石炭火力発電所は、残り4基となる。英政府は2025年までに石炭火力発電を終了させる計画を立てている。

 

9月末に閉鎖されるイングランドのコッタム石炭火力発電所
9月末に閉鎖されるイングランドのコッタム石炭火力発電所

 

 すでに昨年の電力消費に占める石炭火力の比率は5%を切っている。今年の初めには、石炭火力の発電電力なしで、一週間以上も問題なく産業も家庭も過ごせている。石炭火力は経済的にもカーボン税の上昇等で、天然ガス発電や再生可能エネルギー発電に対抗できなくなっている。

 

 RWEのCEO、Roger Miesen氏は「Aberthaw発電所に関連する人々にとっては、閉鎖は困難な出来事だ。しかし、市場の状況を考えると、閉鎖は必要な措置といえる。170人の従業員の処遇については今後数ヶ月かけて、相談していく」と述べている。労働組合は、当初の期待では閉鎖は2021年と予想されていたのが、早まる理由についての説明を求めている。

 

 英国では再エネ発電が全体の3分の1を占め、これに原発電力を加えると、CO2ゼロの電源は2018年の時点で、すでに半分以上を占めているという。環境NGOのグリーンピースなどは今回のRWEの措置を歓迎するとともに、政府が風力・太陽光発電の拡大をむしろ抑制するような政策をとっている、と批判している。

 

https://www.theguardian.com/business/2019/aug/01/german-utilities-firm-rwe-to-close-its-last-uk-coal-plant-in-2020