HOME10.電力・エネルギー |経済産業省、固定価格買取制度(FIT)の入札情報が漏えい。HPで他の入札情報も閲覧可能に。いったん入札を中断、紙の書類で再募集。お粗末な「ITガバナンス」露呈(RIEF) |

経済産業省、固定価格買取制度(FIT)の入札情報が漏えい。HPで他の入札情報も閲覧可能に。いったん入札を中断、紙の書類で再募集。お粗末な「ITガバナンス」露呈(RIEF)

2019-12-27 00:24:35

FIT5キャプチャ

 

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の入札情報が、事業を担当する経産省傘下の「低炭素投資促進機構(GIPO)」(理事長、柏木孝夫東京工業大学特命教授)のシステムで、他の入札参加者の情報も閲覧できる状態になっていたことが発覚、同事業の杜撰さが改めて露呈した。

 

 事業を所管する資源エネルギー庁によると、2019年度下期の入札期間中の11月28日、入札参加者からGIPOのHP上で特定の操作を行った場合、他の入札参加者の情報にアクセスできるとの通報があった。

 

 調べると、他の入札者が提示する出力(容量)、入札価格等の情報を見ることができる状態になっていた。少なくとも、太陽光発電の入札の第4回(8月9日~同23日)と第5回(11月21日~12月6日)、バイオマス発電の入札の第2回(同)の期間中に発生したとされる。

 

FIT3キャプチャ

 

 通報を受けたGIPOは、直ちにシステムを停止。11月29日、再エネ特措法に基づき、経産省はGIPOに対して、原因の究明と再発防止策を命じた。その結果、入札システムのページへのアクセス権限の設定で、システムの再委託先が実施した改修作業による人為的ミスが原因だったという。

 

 システム事業者のミスが原因としても、システムを運営する立場からの内部モニタリングが機能していなかった。利用者が不具合に気付いてから、対応するというのでは、「ITガバナンス」上の組織的欠陥があると批判されても仕方がないだろう。

 

  対象となった入札で確認された漏えい件数は396件に達した。ただ、入札で一番重要な「上限価格」の情報漏えいはなかったとしている。既に入札が終了した太陽光発電の第4回入札では、アクセス状況や個々の入札行動、入札価格の偏り等が起きていなかったことなどから、情報漏えいによる入札への影響はなかったと結論付けている。

 

GIPOのHP上での情報漏洩の状態
GIPOのHPで生じた情報漏洩の状態

 

 ただ、太陽光発電の第5回入札と、バイオマスの第2回入札は、発覚時点で、入札期間期間中だった。このため、「漏えいした他の参加者の情報を知った参加者と、そうでない参加者との間で、情報の非対称性が生じており、公平性に与える影響が大きい」としていったん中断した。

 

 その後の対応として、「入札参加資格を得た件数・容量(出力)」を公開し、情報システムのセキュリティ面での検証が済むまでの暫定的な措置として、電子入札ではなく、紙による入札に切り替えることとした。今月26日から再開された。

 

 再開された入札の締め切りは2020年1月10日まで延長している。同入札の結果の公表、落札者への通知は同年1月20日頃の予定だ。すでに入札をした参加者も、改めて入札を行う必要がある。さらに再開した入札での募集容量・上限価格については、非公開の調達価格等算定委員会が検討するとした。

 

代わりの入札は、「紙」で提出。実印も忘れないでね
代わりの入札は、「紙」で提出。実印も忘れないでね

 

 同省は、今回の入札参加資格を得た件数・容量を公開した。太陽光発電は88件で324MW、バイオマス発電は4件で6MW。太陽光発電の募集容量は約416MW、バイオマス発電は120MWのため、いずれも募集容量をかなり下回ったことになる。

 

 入札自体が依然、低調な状態が続いているわけだ。情報漏洩自体が、入札参加者側の強力なアクセスによるものではなく、GIPOのシステム管理の「緩み」によって生じたとみられる点も、再エネ入札制度の「不人気」の現状を映す形でもある。

https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/051_01_00.pdf

http://www.teitanso.or.jp/resource/1575030735000/docsNyusatsu/info_20191129.pdf

http://www.teitanso.or.jp/general_message