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小泉進次郎環境相、ベトナムでの石炭火力発電事業への「反対」取り下げ。政府内で石炭火力事業輸出ルールの見直し作業には着手。6月までに結論(RIEF)

2020-02-26 17:20:27

MOE1キャプチャ

 

  小泉進次郎環境相は25日、石炭火力発電プラントの輸出支援要件を見直す作業を政府内で開始する、と公表した。現在、わが国では新興国や途上国向けの石炭火力発電事業の輸出について、エネルギー基本計画に基づくルールを決めているが、グローバルに石炭火力抑制の動きを踏まえて、ルールの見直し等を検討する。11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向けて、6月までに結論を出す方針。

 

 現在、政府は2018年に閣議決定したエネルギー基本計画に基づいて、わが国からの石炭火力の輸出支援の条件として①価格の安い石炭を選択せざるをえない国②日本の高効率石炭火力への要請がある③相手国の気候変動対策と整合的である④超々臨界圧石炭火力(USC)以上の設備、の4条件をルールとして輸出支援の判断をしている。

 

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 しかし、温暖化の進行に危機感を抱く欧州等では金融機関やエネルギー会社等も、日本が「OK」とするUSCなどの高効率石炭火力からも距離を置く動きが広がっている。先に、米銀JPモルガン・チェースも、USCを含むすべての新規の石炭火力発電事業向けファイナンスを停止する方針を公表している。

 

 小泉環境相は昨年末のマドリードでのCOP25に出席した。その際、国内でも多くの新規の石炭火力建設案件を抱え、さらに、インドネシアやベトナム等の東南アジアへの「日の丸」石炭火力事業計画を複数、推進している日本の姿勢に対して厳しい批判を浴びた。

 

 その後、小泉氏は今年1月、日本の輸出案件のうち、ベトナムの「ブンアン2石炭火力発電事業」に、公的金融機関の国際協力銀行(JBIC)が融資を検討していることに反対の姿勢を示した。同案件は三菱商事の香港法人が事業会社に参加しているが、事業のEPC(設計、建設、調達)は中国と米国企業が担う。一方、融資団にはJBICの融資を前提に日本の3メガバンク等が顔をそろえる。

 

JBICの融資停止を求める環境NGOのメンバーたち
JBICの融資停止を求める環境NGOのメンバーたち

 

 同氏は、USCの発電設備は日本の4条件に合うが、その設備は中国と米国の企業が納入予定であることから、日本の要件の前提を満たしていない、と主張していた。この日、同氏は、「ブンアン2は、日仏首脳会談共同声明で協力を確認している案件であることなどを踏まえ、公的支援を実施する方向になっている」と述べ、ブンアン2計画への反対の姿勢を取り下げる方向を示した。

 

 そのうえで、今後、環境省内で石炭火力輸出条件の整備についての議論を進めることを強調した。環境省自体には、輸出政策を立案する権限はないことから、経済産業省、外務省、財務省等の関係省と協議する。新たな見直し方針については、政府のインフラシステム輸出戦略の骨子に盛り込む方向という。

 

 環境相の方針に対して、環境NGOのFOEJapanは「現在計画中の案件を見直すことなく、日本政府が公的支援を付与し、石炭火力発電所の建設の後押しをするならば、日本は依然として温室効果ガスの排出抑制に真剣に取り組む姿勢がないと受け取られるだろう」と小泉氏と政府を批判する声明を発表した。

 

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/va/200226.html