HOME11.CSR |世界の主要資産運用機関の責任投資調査。4分の3は人権方針持つが明確な行動確約は3社だけ。調査したShareActionは「口先だけ」と批判。スコア1位はオリックス系のロベコ(蘭)(RIEF) |

世界の主要資産運用機関の責任投資調査。4分の3は人権方針持つが明確な行動確約は3社だけ。調査したShareActionは「口先だけ」と批判。スコア1位はオリックス系のロベコ(蘭)(RIEF)

2020-05-18 21:49:47

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 責任投資を推進する英NGOの「ShareAction」は、日本勢を含むグローバルな資産運用機関75社の人権課題への取り組みを評価するレポートを公表した。それによると、対象機関の4分の3は人権対応をESG方針の中に盛り込んではいるが、実際に人権コミットメントを明確に行っているのは3社だけ。国際的な人権や労働権のフレームワークに反する企業を投資からの排除を実行している機関も3割でしかなかった。同NGOは資産運用機関の人権配慮の多くは「リップサービス(口先だけ)」と指摘している。

 

 ShareActionはグローバルな資金移動を仲介する資産運用機関業界の責任投資への取り組みを評価点検する「Point of No Returns」報告をシリーズでまとめている。責任投資ガバナンス、人権、気候変動、生物多様性の4分野に分けて分析。このうちガバナンスについては4月に公表済みで、今回、人権レポートをまとめた。他の二つは6月に公表する予定。

 

 対象の資産運用機関は最大規模の米BlackRockのほか、欧州勢40社、米国25社、アジア9社、アフリカ1社。日本勢はアセットマネジメントワン、野村アセットマネジメントなど5社が対象となった。ShareActionの調査に回答しなかった機関については、公的開示情報を元に評価する手法とした。

 

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 対象機関の76%は、投資対象の資産全てを対象とする人権方針を定めていると回答した。しかしそうした一般的な規定とは別に、70%以上は、国際的な人権・労働権フレームワークに沿った違反企業に対する除外規定やエンゲージメントにコミットしていないことが明らかになった。

 

 84%は、人権侵害で国際的な制裁を受けている国の国債(北朝鮮、リビア、イエメン等)を投資対象から除外する政策を持っておらず、47%は国際武器条約等によって禁じられている紛争兵器への投資規定を整備していない。31%は人権へのエンゲージメントのための明確なアプローチを持たず、エンゲージメントへの積極的なアプローチを持っているのは20%に過ぎなかった。

 

 前回の責任投資ガバナンスの評価と、今回の人権対応を合わせた各機関のスコアリング評価で、第一位はオランダのロベコ。同社は1929年にオランダ・ロッテルダム設立のグローバル資産運用会社で、株式から債券までのアクティブ運用の投資ソリューションを提供している。2014年以降は、日本のオリックスグループの傘下にある。運用総額は1730億ユーロ(約21兆円:2019年12月現在)。

 

責任投資ガバナンスと人権配慮を合わせたスコアリングランキング上位20位
責任投資ガバナンスと人権配慮を合わせたスコアリングランキング上位20位

 

 2位は仏BNP Paribas Asset Management。3位に英Legal & General Investment Management。5位のAviva Investors InvestorsまでがA格付。その後、BBB、BB、Bと格付が続く。日本勢では27位にみずほフィナンシャルグループ系のアセットマネジメントワンがCCC、以下、野村アセットマネジメント(32位)、日興アセットマネジメント(36位)、三井住友信託アセットマネジメント(48位)、三菱信託銀行(50位)。

 

 ShaActionのシニアアナリストのFelix Nagrawala氏は「今回の調査で明らかになったことは、世界の主要な資産運用機関は人権擁護のリップサービスをしているが、その大半は、人権侵害、労働者権利侵害をしている企業への投資をポートフォリオから排除できていない」と指摘している。

 

https://shareaction.org/wp-content/uploads/2020/05/ShareAction-Human-Rights-Report-2020-Final.pdf

https://shareaction.org/wp-content/uploads/2020/03/Point-of-no-Returns.pdf