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国際金融公社(IFC)、自らが発行するグリーンボンド等の引受金融機関のESG対応を直接確認へ。化石燃料関連事業の除外規定等もチェック。引き受け機関を通じ投資家のESG促進も(RIEF)

2020-06-08 08:37:17

IFC001キャプチャ

 国際金融公社(IFC)は、同機関の資金調達である債券発行に際して、引き受け金融機関のESG度を自ら評価するため、銀行や資産運用機関のESG配慮度を直接、確認するプロセスを導入する。金融機関のESG評価は外部のESG評価会社等が担うこととが一般的だが、「IFCは発行体と引き受け金融機関のESG連携を強化することでESGへのエンゲージメントをシステマテックにすることができる」と指摘している。引き受け金融機関を通して、投資家のESG対応も促す狙いがあるようだ。近く、対象となる約40の金融機関に対してESG質問状を送るという。

 IFCは世界銀行グループの途上国企業向けの融資機関として、毎年、140億~160億㌦(約1兆5000億~1兆7000億円)規模の債券を発行して資金調達している。このうち、約20%はグリーンボンド等のESG債。IFCは毎年、IFCの資金調達に関与するすべての銀行等を対象に、それぞれのESG活動を直接問いただす質問状を送る。

 質問状は約20の項目からなる。報道によるとその内容は、対象となる銀行、金融機関の年間のカーボンフットプリント量やその増減動向のほか、その測定にどのような手段を用いているか、金融機関のESG政策に関する公表内容、債券等の引き受けに際して、特定のセクター等の除外規定の有無、ESG上のリスクのあるセクター、企業向け債権の動向等、金融機関の実務内容に踏み込んだものとなっている。

 たとえば、「除外セクタ―の有無」では、化石燃料関連事業、アルコール、タバコ等を例示している。環境・社会ポリシーに明確に記載していないと、IFCとの取引ができなくなる可能性がある。IFCでは近く、質問状を送付し、10日以内での回答を求めるとしている。

 これまでの外部のESG評価機関による企業や金融機関への質問やアンケート等では、多くの対象企業に対して同じ内容の質問を送って、横比較が可能な分析をすることが多い。ただ、市場では多くの評価機関や、CDP、PRIなどのNPO等も同様の質問状を企業に送付して回答を求めるため、受け手の企業側では回答に忙殺され、「回答疲れ」が生じているとの指摘もある。

 今回、IFCが、外部の評価機関を通さず、取引をする引受金融機関に絞って「ESG直接対話」を試みるのは、IFCとの取引を前提として、金融機関が自らのESG尺度を高めるインセンティブとなるようにしたいとの期待があるようだ。逆に言うとIFCの質問状の対象とならない金融機関は引受機関から排除されることにもなる。

 IFCの投資家担当のEsohe Denise Odaro氏は「われわれのESG質問状は発行体主導という点でユニークだ。現在のESG評価やレポーティングの多くは外部ESG評価機関が、ESGボンドごとや、企業ごとに実施している。これに対して、IFCの今回のアプローチは、発行体と引受機関の対話の中にESG考慮を盛り込むもので、ESGをシステマティックにエンゲージするうえで非常に重要なプロセスになる」としている。

 個別金融機関向けの質問状で得たデータについては、毎年実施する引受金融機関全体との議論にも活用するとしている。こうしたESG評価は、IFCが発行する中期ノートを含めた同機関の債券発行時の引き受け金融機関を選好する際に反映されるほか、引き受け機関がIFC債券を投資家に割り当てる際の投資家選好にも適用されるとみられる。引き受け機関を通して、投資家のESG対応を高める効果も狙っているわけだ。

 IFCの資金調達部門のグローバル責任者であるFlora Chao氏は「IFCはサステナブル市場でのリーダーとしての役割を続けていく。今回の新しいプロセスの採用で、われわれのパートナー(引き受け金融機関)とともに、市場の関心を高め、効果的な変化を促していきたい」と述べている。

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