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シンガポール通貨管理局(MAS)、金融機関向け環境リスクマネジメントのガイドライン案。ガバナンス、リスク対応、情報開示等の整備求める。グリーンファイナンスのハブ化目指す(RIEF)

2020-06-27 08:04:37

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  シンガポールの中央銀行に相当するシンガポール通貨管理局(MAS)は、金融機関向けの環境リスクマネジメント・ガイドライン原案を公表した。ガイドライン案は「銀行・金融会社」「保険」「資産運用会社」の3部門に分かれ、8月7日までに意見を表明するよう求めている。同案は金融機関が環境リスクに対してレジリエンス(強靭性)を高め、環境的に持続可能な社会への移行を金融機関が支援する役割を強化することを目指している。

 

 MASは昨年、グリーンファイナンス行動計画(MAS’s Green Finance Action Plan)を公表、20億㌦(約2140億円)のグリーン投資計画(GIP)も実施している。これらの対策はシンガポールをアジアでのグリーンファイナンスのセンターにすることを目指した基盤整備策だ。今回の金融機関向け環境リスクマネジメントのガイドラインもその一環。

 

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 ガイドラインには、環境的に持続可能な経済への移行を金融機関が促進するための措置と位置付けている。気候リスクについては中央銀行と金融監督当局で構成する「NGFS」が当局向けのシナリオ分析案を開示しており、それらを通じた移行・物理的両気候リスクのマネジメントも盛り込む。

 

 ガイドライン案は 金融機関のガバナンス、リスクマネジメント、環境リスク情報開示に対するMASの監督体制を整備する狙いがある。まず、ガバナンスでは、金融機関の経営層及びシニアマネジメント層は、環境への配慮を組織の戦略、経営計画、金融商品・サービスの提供に組み込むほか、環境リスクマネジメントに関する効果的な監督を維持することを求めている。



 次いで、リスクマネジメントでは、金融機関は、自らが抱える環境リスクの評価、モニター、管理についての政策とプロセスを整備するべきとしている。

 

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 情報開示では、投資家による市場規律を高めるために、金融機関は自らの環境リスクについての定期的かつ意味のある開示を実施すべきである、としている。

 

 銀行向けのガイドライン案では、銀行に対して、一律ではなく、セクターごとの政策立案を求めている。特に高い環境リスクを抱えるセクターの顧客に対する銀行としての期待を明確にするような政策の立案だ。具体的にはCO2排出量の多いエネルギー産業を念頭に置いて、銀行としての環境対応を明確にするよう要請している。

 

 MAS副総裁のOng Chong Tee氏は「新型コロナウイルス感染拡大で、金融機関も規制当局、政策当局も、影響を受けているが、我々の経済と金融システムに明確な影響を示している環境課題に対して、関心を維持し続けることは非常に重要だ。シンガポールの金融機関にとって、自らのビジネスとリスク戦略の一部として、環境リスクに関する正しい理解を持ち、環境関連の課題に対してレジリエンスを改善することは、重要なことだ。MASは金融界のパートナーとともに、これらのガイドラインを共同で作り上げることを歓迎している」と述べている。

 

https://www.mas.gov.sg/-/media/MAS/News/Media-Releases/2020/ENRM_Infographic_June24.pdf

https://www.mas.gov.sg/news/media-releases/2020/mas-consults-on-environmental-risk-management-guidelines-for-financial-institutions#footnote1