HOME |英保険大手Aviva、温室効果ガス排出量ネットゼロ目標を「2040年」に10年前倒し。主要投融資先30社にサイエンスベースド目標設定を要請。石炭関連先への投資は22年末までに引き揚げ(RIEF) |

英保険大手Aviva、温室効果ガス排出量ネットゼロ目標を「2040年」に10年前倒し。主要投融資先30社にサイエンスベースド目標設定を要請。石炭関連先への投資は22年末までに引き揚げ(RIEF)

2021-03-01 18:03:12

Aviva002キャプチャ

 英大手保険のAvivaは1日、2040年までに同社の投資業務を含めた事業活動での温室効果ガス排出量をネットゼロとする目標を公表した。「2050年ネットゼロ」を掲げる国や企業、金融機関が増えてきたが、それを10年前倒しする目標設定は大手金融機関では初めてといえる。同時に炭素集約型の投融資先主要企業30社に対して、各社の排出削減をパリ協定と整合するサイエンスベースド目標に署名し、今後1~3年以内にネットゼロ目標を設定するよう文書で要請した。

 投融資先のうち、特に石炭関連事業からの収入が5%以上ある投融資先企業に対しては、サイエンスベースド目標を設定しない場合は、22年末までに、当該企業向けの投資資産を売却(ダイベストメント)するほか、保険の引き受けも今年末までに停止する。AVIVAは2018年にポーランドの石炭業界への多額の投融資をしていたことが発覚、NGOや市民団体から批判を受けた。今回のダイベストメント方針はそうした過去と決別する意味もありそうだ。

 同社によると、「2040年ネットゼロ」を確実に達成するため、2025年までに25%削減、同30年に60%削減とする中間目標を設定する。対象とする温室効果ガスは、Scope1~3までを含む。また自社の操業とサプライチェーンからの排出量については30年までにゼロとする計画としている。目標達成のために、2025年までにグリーン資産への投資額を60億ポンド充当する。

 炭素集約度の大きい主要投融資先30社への直接要請行動についても、企業から明確な反応がない場合は、保有株の売却を進めるとしているが、現在のところ、対象の企業からは良好な反応が戻っているという。同社は投融資先の対応状況について、毎年公表することも言明している。

 また自社および投融資先、保険引き受け先の気候リスク情報開示を推進するため、5月に予定する株主総会でTCFDの採用について株主の意見表明(advisory vote)を求める株主投票を実施する方針も明らかにした。

  AvivaのCEOのAmanda Blanc氏は「Avivaが気候危機に挑戦する大胆なステップをとるのは、われわれが英国の主要保険会社として、投資先、保険引き受け先を変革し、顧客の要請に応える責任を負っているからだ。世界がネットゼロを達成するためには、リーダーシップと野心が必要だ。Avivaはそうした役割を果たしていく」と強調している。

 英政府のビジネス&エネルギー大臣のKwasi Kwarteng氏も歓迎のコメントを発表した。「 ビジネスは気候変動にチャレンジするうえで、大きくかつ効果的な役割を果たす。Avivaのビジネス全体にわたるラジカルな取り組みは、英国の気候変動への貢献につながり、他のビジネス界が同じ方向に動くよう影響を与えることを期待する。『2050年』の気候変動目標を実現するには、世界をリードする英金融セクターの強みを活用して、CO2排出削減に必要な資金を供給し、かつ新たな雇用を支援する必要があり、Avivaのような企業と協働しなければならない」。

  ただ、環境NGOからは歓迎の声とともに、さらなる方針の明確化、厳格化を求める声も上がる。気候キャンペーングループ「Insure Our Future」のLindsay Keenan氏は「石炭関連企業からの投資引き揚げは歓迎する。ただ、石炭だけでなく、石油・ガスを含むすべての化石燃料事業からの投資を引き揚げるべきだ。エネルギー産業は引き続きこうした業務を拡大しており、新規の化石燃料開発事業を計画している」と指摘している。

 さらに、実際に目標通りの投資引き揚げ等がなされているかどうかの進捗状況を透明化にするため、透明な第三者によるモニタリングをすべきとしている。

https://www.aviva.com/newsroom/news-releases/2021/03/aviva-becomes-the-first-major-insurer-worldwide-to-target-Net-Zero-carbon-by-2040/