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温暖化合意で保険会社の投資資産に大打撃のリスク、英中央銀行が警告。保険金支払い増の可能性も(FGW)

2015-03-05 23:25:02

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fossil-fuel-pa-v2英中央銀行のBank of Englandの信用規制担当者は、今年末に予定される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、前向きな合意が得られると、保険会社は自社の投資ポートフォリオに大打撃を受ける可能性があることを警告した。

 

指摘したのは同銀行のPrudential Regulation Authority (PRA)のナンバー2の座にあるPaul Fisher氏。保険産業の会合で講演、保険会社の長期投資が、石油、ガスや石炭などの化石エネルギー産業株に偏在していることから、COP21で2020年以降のCO2排出削減策での国際合意が得らええると、これらのエネルギー関連保有株の価格が下落するリスクが大きいことに言及した。

 

エネルギー産業は長期にわたって採掘可能な化石燃料資産を抱えている。長期投資を軸とする保険会社にとって、こうした安定的に投資収益を見込めるエネルギー会社の株を投資ポートフォリオの中に比較的多く組み込んでいる。しかし、温暖化対策での国際合意がまとまると、エネルギー会社が抱えるこれらの資産は開発できない「負債」に転じる恐れが出てくる。フィッシャー氏は、そうしたリスクを投資家である保険会社が負う懸念を示した。

 

フィッシャー氏は「明確なリスクは、化石燃料の使用を制限する方向へ各国が政策変更することで、保険会社の投資がリスクに転じることだ」と述べた。同氏は保険会社が抱える気候変動リスクをカバーするために、中央銀行として特別の資本準備等を課すかどうかについては明確には方針を示さなかったものの、保険業界にとって重要な課題である点を再三強調した。

 

世界の主要エネルギー会社は、2013年だけでも6700億㌦を新規資源開発に投じている。これらの資源開発に対しては、損害保険をかけていることから、温暖化対策で開発の停止やエネルギー会社の収益低下などが生じた場合、保険会社への保険金請求が増大するリスクもある。つまり保険会社は投資と本業の保険付与の両面(生損保兼営の場合)で影響を受ける可能性がある点も指摘した。

 

英中央銀行は、気候変動が引き起こす金融リスクについて、今年の後半にも政府に報告書を提出する予定という。

 

COP21で世界の温度上昇を産業革命以前から2度以内に抑制することで合意すると、世界中の石炭資源の8割、ガスの半分、石油の三分の1は開発できない、との試算が示されている。これらの資産は「Stranded Asset」あるいは「Cabon bubble」などと呼ばれている。