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サステナブルファイナンス大賞キーパーソンに聞く⑤ゴールドマンサックス証券インフラストラクチャー・ストラクチャードファイナンス部、井上徹氏「太陽光発電のプロジェクトボンド。年内に10億㌦達成目指す」(RIEF)

2016-02-25 18:16:25

GSキャプチャ

 

 ゴールドマン・サックス証券は、サステナブルファイナンス大賞の特別賞を受賞しました。日本の金融機関に先駆けて、日本市場で太陽光発電事業を対象としたプロジェクトボンドを開発、展開してきたことが評価されました。インフラストラクチャー・ストラクチャードファイナンス部の井上徹部長に聞きました。

 

――太陽光発電事業をボンドにしたのですね。

 

井上:ゴールドマン・サックスでは、インフラと資本市場を結びつけることをグローバルでテーマとしてやってきました。有料道路やごみ処理場、あるいは航空会社の特定路線からのキャッシュフロー、通信インフラなど。その一つとして日本では主に太陽光発電事業を手掛けてきました。一つのボンドに複数の発電所をいれるので、これまで7つのボンドを発行、発電所の数では17か所。プロジェクトボンドは発行体にも投資家にもメリットが明確にある商品で、われわれのビジネスとしても堅調に発展しています。

 

――発行体と投資家にとってのメリットとは?

 

上:通常なら銀行から融資を受ける事業を、有価証券の発行によって資本市場から資金を調達することで、銀行からの融資より魅力的な条件になる可能性があるということです。機関投資家にとっては、超長期で固定金利の運用先を確保したいが、これまでは国債や地方債以外は非常に限られていました。しかも円建てとなると、ほとんどない。そこで円建てのインフラを引き当てとした超長期で固定金利のボンドを組成して販売すると、非常に歓迎されます。

 

――太陽光発電市場の手応えはどうですか。

 

井上:ゴールドマン・サックス全体ではクリーンエネルギー全体に1500億ドルを投じる目標を立てています。そのうち日本では10億ドルを目標にしていますが、年末を目指して努力しています。近い将来には達成できる勢いですね。太陽光発電などの日本のクリーンエネルギー市場は非常に大きな流れになっています。中には「太陽光はもう終わった」とか、いう人たちもいますが、そういう人たちは、短期間で荒稼ぎしようとしていた人たちだと思います。確かに固定価格買い取り制度(FIT)の当初は、政策的に少し利幅を厚くしていましたが、今は正常化の過程で、これから先は本当のエネルギーのプロによる、まともな安定した市場になると思っています。

 

――プロジェクトボンドの買い手の反応はどうですか。

 

井上:主な買い手は保険会社、地方銀行やノンバンクなど。市場がある程度大きくなって、流動性が高くならないとなかなか動きづらい投資家もいるようです。

 

――太陽光以外の再エネ発電も手掛けますか。

 

井上:今も(太陽光以外の)仕掛かり中のものはあります。ただ、太陽光に比べてプロジェクトが成立するスピードや市場に出てくる数がまだ少ないので、事業のほうの成長を待っている段階ですね。

 

――これまでのボンドは私募ですよね。公募のグリーンボンドを開発する予定はありませんか。

 

井上:公募にしたほうが、確かに流動性が高まり、買いやすくなる投資家も増えると思います。そうした時代がゆくゆくは来るでしょう。ただ、今はあえて公募にしなくても十分に対応できています。つまり流動性が低くても買いたいという投資家を相手にしています。今後、すそ野が広がってきて、流動性の高いものでないと買わないという投資家も対象にしていくとなると公募も考えると思います。

 

――プロジェクトボンドもグリーンボンドの一種ですが、グリーンボンド市場を日本で開拓するうえで必要なことはなんでしょうか。

 

井上:政策的な支援などの議論もあるようですが、究極的には、欧米のように、「グリーンな投資をしなければいけない」という風に投資家の投資方針が変わる必要があります。投資家のポートフォリオに占めるグリーンの比率を増やさないと、保険契約者、あるいは当局ににらまれるという状況になれば、投資家は自ずとグリーン投資を増やすでしょう。そうするとボンドで資金を調達しようとする側もいい条件を提示するようになり、グリーンボンド市場が成長していくと思います。これが本質的なことではないでしょうか。

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