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世界の70以上の環境NGO。バングラデシュのユネスコ世界遺産に近接する石炭火力建設計画で、融資予定のインド輸出入銀行に「融資取り止め」を共同要請(RIEF)

2016-05-10 00:53:34

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 29か国、70団体以上の環境NGOや市民団体が、世界遺産であるバングラデシュの世界最大のデルタ地帯に近接するランペール石炭火力発電所建設計画に融資を検討中のインド輸出入銀行に対して、融資を中止するよう求める共同声明を出した。

 

 共同声明をまとめたのはBankTrack、 Greenpeace International、 Rainforest Action Networkなどのほか、インド、バングラデシュの環境、市民団体など。

 

 焦点になっているのは、バングラデシュのクルナ管区南部に広がるスンダルバンス(シュンドルボン)国立公園。マングローブ群生地帯などはベンガルトラの生息地でもあり、1987年に国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の世界遺産に登録されている。

http://rief-jp.org/ct12/53147

  ところがバングラデシュ政府は同公園の保護林の上流14kmにあるランパールでの石炭火力発電計画を承認した。事業はインドの National Thermal Power Corporation (NTPC) とバングラデシュの電力開発委員会(BPDB)が、ジョイントベンチャー「Bangladesh-India Friendship Power Company Ltd」を設立して進めている共同国家事業でもある。

 

 発電所は出力1320メガワット。稼働すると、25年間にわたって毎年790万㌧のCO2を排出、NOx、ばいじんなども周辺に拡散させる。建設に必要な資金のうち16億㌦をインド輸出入銀行が融資する計画で、7月までに融資を最終決定するとみられている。

 

 バングラデシュ政府は、公園への影響は十分に遮断される距離、と説明してきた。しかし、広大な同地域には生息数世界で100頭とされるベンガルトラのほか多数の貴重な生態系がある。また100万人以上の原住民が漁業等で生活している。これらの生態系,生活圏への影響は十分な説明がなされていない。

 

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 同事業への批判が欧米のNGOに強いことから、これまで有力な融資供給先とされたフランスのBNPパリバやクレディアグリコなど複数の金融機関は相次いで参加を取りやめた。そのため、インド政府は公的金融機関の輸出入銀行を動員する形となっている。

 

 しかし、インドの環境省のルールでは、石炭火力発電所は、国立公園や野生動物保護区など生態系保全の必要な地域の外縁から25km以内には建設してはならないと定めている。今回のランペールの事例はその基準に抵触するとみられる。

 

 インドの環境団体であるSoumya Dutta of the Indian People’s Science Campaignの Bharat Jan Vigyan Jatha氏は、「インド政府と国営企業のNTPCは自らの規範を破るとともに、地域住民とスンダルバンスの自然に対して犯罪を犯すことになる。インド輸出入銀行も融資をすると同罪だ」と指摘している。

 

 バングラデシュ自体は、太陽光発電や風力発電、さらに豊富な森林を利用したバイオマスなど自然エネルギーが極めて豊富だ。にもかかわらず、石炭火力を建設すると、国全体のCO2排出量が15%分も増えることになる。

 

 BankTrackのclimate and energy campaignerである Catalina von Hildebrand氏は「銀行が世界の市民に対する自らの責任を真剣に考えるならば、地域住民に大きな影響を与え、地球温暖化にも逆行する事業に融資をすべきではない。石炭火力はすでに過去の事業。銀行は未来に対して融資をすべきだ」と指摘している。

http://www.banktrack.org/rampal/