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グリーンボンド原則(GBP) 2016年版に改定。ソーシャルボンドのガイドラインも制定(RIEF)

2016-06-17 10:28:33

GBキャプチャ

 

 金融界で組織するグリーンボンド原則(GBP)はロンドンで理事会を開催、2016年版のGBP方針を承認、直ちに公開した。また新たにソーシャルボンドの自主的ガイドラインを制定した。

 

 承認された新たなGBP方針では、グリーンボンドの対象プロジェクトに、「エネルギー効率化を促す製品、技術、製造工程」を追加した。また従来、「廃棄物マネジメント(waste management)」としていたカテゴリーを、「汚染防止と抑制(Pollution prevention and control)」に名称変更した。

 

 グリーンボンドを発行する金融機関のモデルになるベストプラクティスの情報開示の仕組みである「Harmonised Framework for Impact Reporting」の改訂版についても承認した。

 

 新たに打ち出されたソーシャルボンド(SB)のガイドラインは、環境・社会・ガバナンス(ESG)を推進する事業の資金調達として、途上国の人権問題や先進国でも労働問題などによる社会格差是正などの需要が高まっていることを受けたもの。SBのガイドラインは基本的にはグリーンボンド(GB)のガイドラインを踏襲しており、対象事業や対象層を明確にした。

 

 GBPの理事会議長でもある欧州投資銀行(EIB)の資本市場部門のトップのEila Kreivi氏は、「この新しいSBのガイドラインは、GBPが市場の成長に即してベスト・プラクティスを提供していくことを示している」と自賛している。

 

  新たなSBの原則はGBPのアネックス(付帯物)の形で、GBP同様に4つの原則を示している。①資金使途②事業計画の評価と選別のプロセスの明示③資金の管理④報告、である。
 <SBの具体的な対象プロジェクト例>

(1)利用可能な基本インフラ(クリーンな飲み水供給施設、下水設備、公衆衛生、公共交通など)

(2)重要な社会サービスへのアクセス(健康、教育、職業訓練、健康管理、金融と金融サービスなど)

(3)適切な住宅

 

(4)雇用者対策(中小企業ファイナンスやマイクロファイナンスの潜在的な効果を通じる場合を含む)

 

(5)食品の安全性

 

(6)社会経済的な進歩と権限付与に関するもの

 

 

<SBの資金使途の対象層>

 

①貧困層ラインを下回る生活水準の層

 

②除外されたり、限界扱いされる人々やコミュニティ

 

③災害被害者を含む弱者グループ

 

④身体に障害のある人々

 

⑤移民、あるいは移住を強いられた人々

 

⑥十分教育を受けられない層

 

⑦失業者

 

  ソーシャルボンドで調達された資金は上記のプロジェクトに充当されるほか、対象となる市民層、集団のために活用される。また同ボンドへの投資家は、投資資金が実際に社会的活動やグリーンプロジェクトに適用されていることを確認できる情報の開示を求めることになる。

 

 

 ソーシャルボンドの原則が示されたことで、これまでグリーンボンドの範疇で扱われていたいくつかのボンドについても、ラベルを「G」から「S」に張り替えるものがあるかもしれない。日本の日本政策投資銀行は、一昨年はグリーンボンド、昨年はサステナビリティボンドと、投資対象の違いに応じて、ボンドの名称を変えている。

 

 またGBP理事会は2016年版のGBP方針の中で、「より良いレポーティングと、より良い透明性」こそが、ボンド普及のカギになるとして、事務局となっているICMA(国際資本市場協会)のサイト上に「情報テンプレート」などを整備した。発行されるグリーンボンドや新たなソーシャルボンドが、4つの原則に適合しているかどうかを示す基本的な情報が得られる。