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化石燃料関連投融資引き揚げ(Divestment)で、米ニューヨーク大学と英ケンブリッジ大学の投資姿勢の違い明瞭に(RIEF)

2016-06-24 14:38:45

NYUキャプチャ

 

 機関投資家でもある大学の資産運用で、米ニューヨーク大学と英ケンブリッジ大学が、正反対の判断をした。気候変動対策で資産運用の対象から石炭等の化石燃料関連産業・企業への投資資金を引き揚げるDivestment活動、さらにはESG要因を投資判断に盛り込むことの議論だ。

 

 まず35億㌦(約3675億円)の大学基金を持つニューヨーク大学の理事会はこのほど、Divestmentを運用方針に取り入れることに反対の議決をした。理事会議長の William R. Berkley氏と、学長のAndrew Hamilton氏の連名で公開された声明では「理事会はDivestmentが適正な行動とは思わない」と理由を示した。

 

 ただ、そのうえで、「大学としては温室効果ガス削減と持続可能性を高めるための具体的な方法を模索し、取り組んでいく」と述べ、温暖化対策にネガティブではないことを強調している。

 

 大学の学生や事務員、学部などの代表で構成する評議会は、昨年、化石燃料関連産業への投資を停止する呼びかけを採択している。このため、今回の理事会の決定は、評議会の判断を否定した形となる。

 

 この点で理事会の声明は、大学基金の最優先課題は、大学の学術的かつ研究の使命を支援することにある。基金の運用に当たっては慎重な投資(Prudent investment)が大学の信任につながる」と述べている。

 

 Cambridgeキャプチャ

 

 一方、英ケンブリッジ大学は大学基金の運用委託先に対して、気候変動リスクを投資判断に加えることを要請する文書を配布した。長期的な視点でESG戦略を投資判断に織り込ませることを求める内容だ。

 

 送られた文書は、大学のCIOの Nick Cavalla 氏と、副学長のSir Leszek Borysiewicz による連名。大学の基金は59億ポンド(約75億ユーロ:約9000億円)。このうち、大学が独自に運用するファンドのうち59%は株、12%はプライベート投資、13%はヘッジファンド、残りの11%は実物資産と不動産という配分になっている。

 

 資産運用会社への委託分と、大学の個別運用分の両方について、ESG要因を投資判断に組み込むことを求め、さらに企業に対する株主行動についても要請している。何よりも、同大学は、すでに石炭関連やタール産業に関連した企業向けの投資からのDivestmentは実施済みなのだ。それに加えて太陽光発電等への投資を増やす方針を明確に打ち出している。

 

 文書では、さらに投資判断に対して大学の研究成果を踏まえて、ESG要因を企業価値に統合することを進めることを求めている。Divestmentの次のステップは、投資先の企業経営への関与を強めるというエンゲージメントが視野に入ってくるわけだ。また、将来の政策や規制の変更が特にエネルギー効率性の悪い企業や、汚染量の多い産業の経済的リターンに影響を及ぼすことも指摘している。

 

 ESG要因を投資判断に統合化するという点で、ケンブリッジ大学は、ニューヨーク大学のさらに先を走っていることは間違いないようだ。がんばれニューヨーク大学!(日本の大学もがんばってください)

 

http://www.nyu.edu/