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スイス再保険 中国・黒竜江省で、気候変動による自然災害増から農家の収入を補償する新型保険プログラム提供へ。衛星・気象データで損害額を迅速認定(RIEF)

2016-08-04 16:56:19

swissreキャプチャ

 

 スイス再保険(Swiss Re)は、中国・黒龍江省と現地の保険会社などと提携し、同地域の農民向けに、気候変動の激化で被る農作物被害を補償する新型保険プログラムを提供する。自然災害被害を衛星データと気象データで迅速に評価する仕組みを開発した。

 

 中国政府が気候変動による自然災害の農家被害を民間保険でカバーするサービスを認めたのは初めて。中国北東部に位置する黒龍江省は、稲作などの農村地帯だが気候変動の進行による豪雨、洪水、干害、低温などの自然災害の影響を頻繁に受けるようになっている。その結果、農作物の収穫が十分でないと貧困問題などに発展する事態もおきているという。

 

 中国では自然災害の影響をカバーする保険自体の普及が遅れている。その理由は、被害地域が広くて損害額の査定・評価に時間がかかることが大きい。そこでスイス再保険は衛星データや気象データを活用した「パラメトリック保険プログラム」を開発、一定の気象条件等が確認された場合に迅速な支払いができるようにした。

 

 保険は同省政府と、地元保険会社の Sunlight Agriculture Mutual Insurance Companyと連携して提供していく。Sunlightは農業保険分野に強い。保険の対象地域は同省の28地方をカバーする。保険の対象は、自然災害で打撃を受けた農業収入の損失補填が軸になる。保険金の上限はプログラム全体で23億2000万人民元(3億4800万㌦)までとする。

 

 同保険は各農家の農業収入が減少した際に、農家の暮らしを資金面で支えることで、貧困対策にもなる。黒龍江省政府も、個々の農家の収入減額の補填を保険でカバーできることで、災害時の復旧活動が円滑に進むとの期待を込めている。

 

 スイス再保険のGlobal Partnershipsの会長であるMartyn Parker氏は「今回の保険は、自然災害によって生じる経済収入の変動をカバーする、真の革新的な保険といえる。同時に、官民連携のパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)の成功事例だ」と自賛している。

 

 スイス再保険は、同様の保険を広東省でも進めており、今年は同省の10地区で開始し、来年はさらに拡大して20地区で実施する予定という。同社の中国法人トップの John Chen氏は「自然災害に適切に対応することは現中国政権の最優先課題の一つ。今回の保険が中国の他の省にもさらに広がることを期待している」と述べている。

 

 気候変動による自然災害の増加で影響が増す農業・農家の収入を補償する保険としては、日本の損害保険ジャパン日本興亜がタイなどで、天候インデックス保険を開発、提供している。ただ、中国市場での提供はまだない。

 

 スイス再保険は2011年に中国の広東省で、地元のGuangdong Meiyan Hydropower社向けに雨量が少ない時の発電量をカバーする中国初の雨量インデックス保険を開発提供したほか、風力発電所用の保険、太陽光発電用保険などを提供してきている。

 

http://www.swissre.com/media/news_releases/nr_20160803_chinaparametric.html