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世界の130の主要投資家・運用機関、来週のG20サミットに向け、パリ協定の年内批准と、効果的な政府政策の実施を公開文書で共同要請(RIEF)

2016-08-25 15:42:01

G20キャプチャ

 

  13兆㌦(1300兆円)以上を運用する世界の130の主要機関投資家と資産運用機関等が、来月初めに開くG20(主要20カ国首脳会議)サミットに向けて、パリ協定の年内批准と、効果ある気候変動対策を求める連名の公開文書を発表した。

 

 各国政府へ要請したのは、北米、欧州、アジア、豪・NZの各投資家団体に属する機関投資家・資産運用機関と、国連責任投資原則(PRI)、CDPなどの6団体。9月4、5日に中国・杭州で開くG20サミットを前に、各国政府が義務的な気候変動対策に取り組むことを強く求めている。

 

 参加した主要機関には、米CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)、CalSTRS(カリフォルニア州教職員年金基金)、仏保険大手AXA、BT年金基金、スウェーデン公的年金ファンドなどが含まれる。残念ながら、日本の機関は含まれていない。

 

 共同公開文はまず、地球の温暖化を抑制するため、世界の気温上昇を産業革命前から2℃以内にするとしたパリ協定は、投資家に対して低炭素社会移行の明確なシグナルを鳴らしていると指摘。各国政府はそうした移行をスムーズに実現する十分な投資を確保するための責任を負っている、と強調している。

 

 そうした状況認識を踏まえた各国政府への勧告として、第一に、パリ協定の年内批准に向けた努力を求めた。協定の批准を早くすればするほど、その国は早くグローバル市場から投資資金を獲得できる、とも主張している。

 

 また2015年のパリ協定の際、今回、名を連ねた6団体の全加盟機関409(保有資産24兆㌦)が「Global Investor Statement of Climate Change」として各国政府に対して提言した政策対応の要請を、速やかに実施するよう求めた。

 

 昨年の6団体提言の主な内容は、①投資判断に資する、安定的で信頼される「カーボン価格付け政策」の導入②省エネや再エネへの政策的支援③低炭素技術開発の促進④化石燃料向け補助金の廃止⑤国の適応計画の立案⑥低炭素技術や気候変動への投資資金に対する金融規制制約の再考、など。

 

 国連の潘基文事務総長はグローバル規模での再エネ投融資を、現状のレベルから、2020年までに倍増させる目標を提唱している。公開文はその目標を実現するためには、各国政府の具体的な政策支援が欠かせない、と述べている。その政策の柱は「化石燃料」への補助を停止し、「再エネ・省エネ」への補助を高めることだ、としている。

 

 またG20諸国に対して、各国の政策として、温暖化対策の実現を最優先政策課題として取り組むことのほかに、経済社会への影響の大きい気候変動リスクを情報開示する制度化の実施を、優先することなどを求めている。

 

 情報開示の国際的な枠組みの議論としては、G20は「green finance study group」を設けて作業を進めており、今回のサミットでその検討結果が示されることへの期待も示した。G20とともに、各国金融監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)も、作業部会を設けて気候リスクの情報開示を促進する活動を行なっている。投資家たちは、G20とFSBの両方の作業結果が各国当局の政策対応に反映されることで、カーボンへの価格付けが容易になるとの期待を示している。

 

 公開文に名を連ねたニューヨーク州会計監察官のThomas DiNapoli氏は「今後、グローバル経済が低炭素経済に移行することは議論の余地がない。投資家の視点に立つと、そこへの移行に伴う最初のステップは、気候変動リスクをもっと開示することである。そのことがパリ協定の約束の実現につながる」と指摘している。

 

 またIIGCCのCEO、 Stephanie Pfeifer氏は「各国政府はパリ協定を速やかに批准すべきだ。そして協定に基づき、気候変動リスクの情報開示を高める政策を実施し、化石燃料への補助金を抑制し、民間の投資資金が低炭素事業等に向かえるような強い価格シグナル策を導入すべきだ」と強調している。

http://www.igcc.org.au/resources/Documents/FinalWebInvestorG20Letter24Aug1223pm.pdf