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ゆうちょ銀行 チリ国立銀行のウーマンボンド約250億円を購入。ESG運用ではなく、あくまで利ざや確保が狙い(?)(RIEF)

2016-08-25 17:09:10

yuchoキャプチャ

 

 関係筋によると、ゆうちょ銀行は、チリ国立銀行(Banco del Estado de Chile)が、国内の女性女性起業家支援のための資金調達として発行した円建ての「ウーマンボンド」を約250億円分、購入したことがわかった。

 

 BancoEstadoは今年6月以来、円建てのウーマンボンドを300億円分発行している。このうち、日本生命がESG投資として8月発行分の45億円分を購入している。http://rief-jp.org/ct6/63770

 

 ゆうちょ銀は、BancoEstadoの総発行分のうち、日本生命購入分を除く残りの債券255億円のほとんどを購入したとみられる。ゆうちょ銀は「個別の債券購入などの取引については情報開示しない。銀行の投資基準も開示していない」(広報部)としている。

 

  日本生命や他の機関投資家は、こうしたソーシャルボンドや温暖化対策資金を調達するグリーンボンドなどへの投資を積極的に進め始めている。本業の資産運用業務を通じて、長期的な社会的価値を実現することが、機関投資家としての責務にもつながるとの判断に基づく。

 

 一方、日本郵政グループの一員でもある、ゆうちょ銀行はグループ行動憲章で「環境や社会との共生の尊重」をうたっているものの、具体的な投融資活動の中で、環境、社会、ガバナンス(ESG)などに、どう対応するのかという基本方針は示されていない。

 

 今回のウーマンボンド大量購入については、「ESGの視点ではなく、単なる利ざや確保が狙い」との市場関係者の指摘もある。BancoEstadoのボンドは、初回の6月発行分(10年債)で、表面金利は0.48%。外債だが円建てなので、為替リスクもない。

 

 現在の超低金利下の日本市場では、同じ10年もの日本国債の表面金利が0.10%(利回りはマイナス0.09%)なので、BancoEstadoのウーマンボンドを長期保有すれば約5倍、有利になる。

 

 グローバルなESG分野への資金供給の広がりを考えると、経営方針にESGの視点を織り込んで投資の幅を拡大する金融機関だけでなく、「利ざや確保」を意識した従来型の投資資金の流入による市場拡大効果も重要だ。ゆうちょ銀のウーマンボンド投資が、そうした意味で従来型の利ざやを意識した投資であったとしても、非難される必要はない。

 

 ただ、ESG評価に基づかない投融資だと、市場の変動によって運用姿勢も変動し、持続可能な資金供給にはつながらない。またBancoEstadoが目指す女性起業家の育成支援といった資金調達目的も、利ざや重視の投資視点の場合は「二の次」であり、投資評価の対象外ともいえる。

 

 同じウーマンボンドを購入した日本生命は、自らも社内で女性活躍推進を持続的成長に不可欠な経営戦略と位置づけており、資産運用の視点に加えて、チリの女性活躍支援に協力したいとの判断で投資を決めた、としている。

 

 ゆうちょ銀のCSRレポートによると、同行も「女性の活躍推進」をうたい、2021年4月までに、管理社員に占める女性の割合を14%以上(現行は10.9%)にする、との目標を掲げている。またワーク・ライフ・バランス支援のための諸制度も一応、そろえている。ただ、本業の資産運用活動と、これらの女性支援策とは連動していないことになる。

 

 民間の生保や銀行は、本業の投融資活動にESG要因を連動させようと、多様な工夫を凝らしている。その一方で、元「公的金融」でもあるゆうちょ銀が、ESGから一歩、かけ離れた歩みをしているとすれば、なんとなく、首をかしげたくなる気分でもある。

http://www.corporativo.bancoestado.cl/investor-relations/newsroom/news-2016/2016/08/11/bancoestado-issued-a-women-bond-for-15-billions-of-yens

http://www.jp-bank.japanpost.jp/aboutus/activity/csr/abt_act_csr_diversity.html