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中国人民銀行、主要政府機関と共同で「グリーンファイナンス・ガイドライン」公表。国家レベルのグリーン開発ファンドの立ち上げ、民間金融機関への利子補給など。G20で宣言へ(RIEF)

2016-09-02 12:06:31

Chinapbocキャプチャ

 

 中国人民銀行(PBOC)は財務省、国家改革発展委員会、環境省などの6政府機関とともに、「グリーンファイナンス・システム」のガイドラインを公表した。その中で、国家レベルの「グリーン開発ファンド」の設立と、国内のグリーンボンドと環境情報開示規制の統合化などを盛り込んだ。

 

 

 人民銀行などがガイドラインを公表したのは、今週末に杭州で開くG20首脳会議においてグリーンファイナンスが初めて、主要課題の一つになることを受けたもの。G20の議長国として中国が、環境金融に率先して取り組む姿勢を宣言した格好だ。

 

 

 ガイドランの共同公表機関には、財務省、国家発展改革委員会、環境省のほか、銀行規制、証券規制、保険規制の各委員会も加わった。日本流にいえば、日銀と財務、環境、内閣府、金融庁などが共同宣言した形だ。

 

 人民銀行は今回のガイドラン公表の目的について、「官民の資金をよりグリーンセクターへ誘導すると同時に、汚染セクターへの投資を制限すること」と位置付けている。再エネや省エネ事業への投融資だけでなく、化石燃料産業等への支援を抑制する両面の視点を明確にしている。

 

 また今回のガイドラインは、中国が目指す国家像である「Beautiful China(美麗中国)」建設のために、環境や生態系とのバランスのとれた発展を意味する「生態文明(ecological civilization)を促進する、と位置づけている。つまりグリーンファイナンスは政治的にも支援を受けている、といえる。

 

 ガイドラインには、まず、人民銀行による金融機関向けの資金供給オペにおいて、グリーンプロジェクト等への金融機関の投融資を支援するため、「グリーン保証プログラム」を提供するとしている。プログラムの中身として、国家レベルの「グリーン開発ファンド」の立ち上げ、グリーンプロジェクト等に投融資する金融機関に対して利子補給する制度の導入などを実施する。

 

 証券市場についても、グリーンファイナンスにおいて重要な役割を演じると指摘。人民銀行が昨年12月に公表した国内のグリーンボンドガイドラインと、IPOを通じて上場する適格グリーン企業への支援、グリーンボンド指標、グリーン株指標、それらの関連金融商品・サービスの提供、そして上場企業や債券発行に際しては環境情報開示制度の義務化を導入することなどを盛り込んでいる。

 

 保険分野についても、グリーンインシュアランスの展開のほか、「環境権」の売買にも言及している。中国は2017年中に温室効果ガスの排出権取引を全国規模での実施を明言しているが、同取引の法的基盤として「環境権」の汚染負債の保険システムを義務化し、温室効果ガスの排出権だけでなく、エネルギー権、水資源権利、その他の環境権も対象とする新たな規制案を導入する考えという。

 

 ガイドラインに沿ったグリーンファインナンス市場が展開すると、中国はグリーンファイナンスのグローバル・リーダー国になる可能性もある。一方、わが国では、温暖化対策と再エネ政策が役所の縦割りで分断されており、金融行政もグリーンファイナンスへの取り組みがほとんど見えない状況が続いている。