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ジョージ・ソロス氏 国連の持続可能な開発目標(SDGs)への民間企業・投資家の積極関与を提唱。OECDレポートで自説展開(RIEF)

2016-09-02 22:30:56

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 ヘッジファンドの大ボス、ジョージ・ソロス氏が、国連の持続可能性目標(SDGs)への企業、投資家の取り組みを後押しするメッセージを発し、話題を集めている。

 

 「ソロスのメッセージ」が掲載されたのは、経済協力開発機構(OECD)が最近、公表した「The Sustainable Development Goals As Business Opportunities」と題した報告書。その序文に文章を寄せている。OECDのレポートにソロス氏が推薦の言葉を寄せるのは珍しい。

 

 SDGsは国連が昨年9月に、途上国への広範な支援を17の目標に集約して、2030年までの実現を掲げて採択した。貧困の終結、飢餓の終結と食糧安全保障の実現、健康な生活の確保、公平な教育機会、ジェンダー平等の達成などだ。これらの目標達成のためには、途上国はもちろん、先進諸国の政府援助だけでも実現は困難。そこで同レポートは、企業・市場の取り組みを促すため、SDGsを「ビジネス機会」としてとらえる視点を提示している。

 

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 ソロス氏は、民間企業や投資家による公的な課題への取り組みが次第に増大していることについて、Ambiguity(両義性)との表現をしている。利益を追求することを通じて、公的な課題の解決にも資するという考えに基づく。ソロス氏は、ヘッジファンドの巨頭として過去に英国イングランド銀行を打ち負かすなどの投資成果を上げる一方、「Open Society」という民主化支援のNPO活動をグローバルに展開してきた。

 

 ソロス氏自身が、市場のリーダーとしての自負心と、社会の公共性を担保する市場を尊重する公的責務の両方を担うという経験を持つ。しかし、社会的貢献とビジネス追求の間には常に葛藤が生じる。その点についてソロス氏は、「もし私自身の利益追求が、公共の利益と摩擦を生じる際には、迷うことなく公共の政策を擁護する」と明確に宣言した。

 

 そしてSDGsについて、「世界のすべての人々のためになる公的利益を表現したもの」と位置づけ、それらは一見、個々のビジネスと対立するかに映るが、実はそこには膨大なビジネスチャンスがあり、私的利益を増やすことが、公的利益を増大させることにつながる、と両義性を強調している。

 

 さらにSDGsは、私企業が自らの利益追求の活動を、公共政策と連動することで、より良く規律付けする機会を提供することを、我々に気付かせてくれる、とも述べている。公共へ貢献することが、企業活動の幅を広げることにつながるとして、起業家や経営者らのビジネスリーダーにとってSDGsへの対応はビジネスの視点からも責務である、と断言した。

 

 ソロス氏は「世界が直面している諸課題の大きさと、未曾有の不平等が世界中に広がっている状況を考えると、われわれが対応しなければならない問題は単に重要であるだけではなく、緊急の課題でもある」として、ビジネス界の行動を鼓舞した。また民間の役割とともに、各国政府や多国籍機関が本来のあるべき役割を果たし、官民の資金を過去にない歴史的なスケールで、途上国の開発のために活用することの重要性を呼びかけた。

 

 最後に、「持続可能な世界の進展は、単に金融的手段や投資だけで達成されるものではない。市民社会の個々人や各機関等が、そうした持続可能な社会への移行のために積極的な役割を演じる能力を高めることが大事だ」とも付け加えている。

 

 OECDの今回の報告書は、SDGsの目標に資する民間セクターの関与について、5の道を示している。①海外直接投資(FDI)②公的金融を活用して投資リスクを軽減する官民協調の「ブランデッドファイナンス」③持続可能な発展のための民間資金の拡大④責任あるビジネス行動⑤社会的インパクト投資、である。

 

 報告書を書いたErik Solheim氏はOECDの前開発局長で、現在は国連環境計画(UNEP)事務局長。同氏は「SDGsは、責任あるビジネスのための持続可能な投資機会を提供するパイプラインとなる。貧困や環境の改善、ジェンダー格差などの社会的不平等の解消等が進むことは、ビジネス機会がそれぞれの分野で拡大することになり、より大きな効果を生み出す」と指摘している。新たな市場づくりにつながるわけだ。

 

 ソロス氏はそうして拡大した市場において、いずれは大きな投機に打って出るのかもしれない。

http://www.oecd-ilibrary.org/sites/dcr-2016-en/index.html?itemId=/content/book/dcr-2016-en&mimeType=text/html