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アジアの金融機関・投資家の気候変動対応 AIGCCが初調査。主要銀行の3割強は気候変動リスクを融資判断に導入、各国の規制は統一されず(RIEF)

2016-09-09 00:25:44

AIGCCキャプチャ

  気候変動に対応するアジアの投資家・金融機関の団体として新たに組織された「Asia Investor  Group on Climate Change (AIGCC)」は、日本を含むアジアの主要金融機関が気候変動にどう対応しているかを比較分析した報告書をまとめた。

 国際エネルギー機関(IEA)の推計では、気温上昇を産業革命以前から2℃上昇に抑えるには、2014~2035年の間にアジアだけで、再生可能エネルギー事業などへの投融資に7.7兆㌦の資金が必要とされる。民間金融機関は、そうした膨大な資金供給の役割を期待されている。

 AIGCCの「Investing for Climate in Asia」調査は、日、中、韓、豪など12カ国の金融市場での主要金融機関88機関を対象とした。銀行36、機関投資家30、保険24(ユニバーサルバンキングの重複あり)。

 それによると、銀行部門では、31%が気候変動リスクをすでに投融資判断に取り込んでいると回答したた。また、61%はグリーン関連金融商品を開発し、58%は気候変動リスクの量的開示を行っていると答えている。

 気候変動要因を、融資を制限する理由にあげた銀行は28%にとどまった。一方、81%の銀行は責任融資に関する銀行の方針を説明しているという。

 年金基金等の機関投資家は、対象の50%がESGを政策方針に取り込んでいると回答した。気候変動リスクに限ると30%に下がる。保険会社は気候変動リスクの評価と、グリーン保険商品の提供についての回答はともに38%にとどまっている。

 AIGCC2キャプチャ

 

 気候変動要因を金融活動に織り込もうとする政府主導の動きは、特に中国で顕著だ。2012年に中国銀行業監督委員会(CBRC)がグリーン貸付指針(緑色信貸指引)を制定、2015年には中国人民銀行と国家改革発展委員会がグリーンボンド・ガイドラインを制定している。

 報告書はこうした中国の事例と対比する形で、アジアの12金融市場全体では、当局の規制対応が「統一されていない」点を指摘している。12市場のうち5市場では気候変動対策で銀行に直接働きかける政策をとっているが、4市場ではサステナビリティ・コード(行政指導)政策で、5 市場では域内の証券取引市場でサステナビリティの情報開示にフォーカスするといった具合だ。

 今回の調査対象となった日本の金融機関は、銀行では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、それにゆうちょ銀行の3行。みずほフィナンシャルグループは含まれていない。保険は東京海上ホールディングスとMS&DIインシュアランスグループ・ホールディングス、年金はGPIF、年金基金連合会、地方公務員共済組合連合会。

 ゆうちょ銀行は調査対象の項目すべてにおいて、「対応できていない」との評価を受けており、日本の金融機関の水準を引き下げる形だ。ただ、ゆうちょ銀は基本的に融資業務が制限されており、資金供給機能は債券購入等に限定される。AIGCCがみずほではなく、ゆうちょ銀を対象に入れた意図は不明。

  報告書はオーストラリアのオーストラリア・ニュージーランド銀行グループ(ANZ)の支援により Asia Research and Engagement (ARE)がまとめた。

 http://aigcc.net/wp-content/uploads/2016/09/AIGCC-launch-060916-FINAL-MR1.pdf