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S&Pがグリーンボンドの「グリーン度」評価で、独自のツール案公表。気候変動の緩和、適応など4つの観点でスコア。投資家等市場の意見を公募(RIEF)

2016-09-12 23:50:43

S&P2キャプチャ

 

  格付け機関のS&P Global Ratingsは、グリーンボンドを評価する新しいツール案(Green Bond Evaluation Tool)を開発、投資家をはじめ市場関係者に公開した。

 

 同案に対する市場関係者の意見のフィードバックを求め、11月にモロッコのマラケシュで開く国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)で、S&Pの姉妹機関のS&P Dow Jones Indices (S&P DJI)とともに、正式に立ち上げる方針という。

 

 新評価ツールは、対象とするグリーンボンドについて、透明性(Transparency)、統制(Governance)、緩和(Mitigation)、適応(Adaptation)の4つの観点でのスコアをつけ、それらのスコアを再統合してE1~E5の5段階の格付けで評価する手法。特に、温暖化対策の二つの柱である緩和、適応の両観点での評価を独立させてスコアリングするのが特徴だ。

 

 S&P1キャプチャ

 

 グリーンボンドの「グリーン度」を評価する手法については、ESG投資を重視する長期の年金基金等の機関投資家の関心が高い。このため各評価機関も、「グリーン・レーティング」手法の開発に力を入れている。最近では日本の格付投資情報センター(R&I)も独自のグリーンボンドのアセスメント手法を開発、公表している。http://rief-jp.org/ct4/64277?ctid=69

 

 S&PのライバルであるMoody’s Investor Servicesは今年3月に、独自の5段階からなるグリーンアセスメント手法を公表。独立系のセカンド・オピニオン評価機関のCicero(ノルウェー)は、緑の濃淡でグリーン度をランク付けするサービスを提供している。http://rief-jp.org/ct6/59864

 

 また、ESG評価機関のTrucostは中国で急増する国内グリーンボンドの評価手法を開発するため、中国の格付け機関のGolden Credit Ratingと共同で、評価フレームワークの開発に着手している。

 

 こうしたグリーン評価手法の開発競争の中で、今回S&Pが独自案を市場にアピールしたことになる。S&Pの環境金融調査部門の責任者で、managing director であるMichael Wilkins氏は「我々の提案は、4つの観点をまとめるという点で、極めてユニークだ」と胸を張る。

 

 4つの観点の中でも柱になるのが、緩和(Mitigation)のスコア。グリーンボンドの使途対象となる再生可能エネルギーやエネルギー効率化等のプロジェクトによる気候変動の緩和度を評価する。各プロジェクトの評価のためのデータは、Trucostが供給する。評価するスコアは、再エネ事業の場合が最も高く、化石燃料使用を改善する「clean coal」などへの技術投資だと、最も低い点になる。「脱炭素」を最優先している。

 

 これらの緩和プロジェクトの評価に際しては、プロジェクト単独の評価に加えて、同プロジェクトが立地する地域での影響度も評価に加えて、再評価する。たとえば、単独の再エネプロジェクトは脱炭素として評価できるが、当該地域の電力網の炭素集中度が高くなっていないかどうか、などを評価に加える。

 

 温暖化対策のもう一つの柱である適応(Adaptation)の評価では、気候変動の激化による自然災害による影響を減少し、かつ影響をマネージするために、コミュニティの強靭性を高めたり、異常気象に備えて重要なインフラ設備を強化するなどの対策を評価する。適応の評価に使う影響データは、S&Pが内部の保険専門家等の助けを借りながら、独自の情報を開発して活用する。

 

 透明性(Transparency)の評価は、情報開示、レポーティング、さらに調達資金の管理システムの品質を評価する。統制(Governance)の評価は、グリーンボンドの環境影響を測定し、マネージするためにどのような手順をとっているかを評価する。評価対象にはボンドの認証、影響アセスメント、リスクモニタリング、リスクマネジメントなども入る。

 

 これら4つの観点から評価した各スコアを元に、ボンドの対象事業の全体スコアをはじくために、一定の重み付けと連携付けを行う。

 

 グリーンボンドの発行体は、通常、ボンドの年次報告において、ボンドの資金使途の影響度を評価し、投資家向けに開示する。S&Pはこれとは別に、独自に気候変動への緩和効果のスコアを計算するという。投資家に対して、中立的、客観的な視点を提供することを目指す。

 

 また、新評価ツールの適用は、GBPやCBIのラベル付きのグリーンボンドは当然、対象になるが、非ラベルボンドでも、より幅広の環境対策の資金調達に活用されるボンドの評価には利用できると想定している。地方自治体などが定期的に発行する地方公債などの評価が該当するとみられる。

 

 評価の時間軸は、中期(2~5年)と、長期に分かれ、中期の評価要因はより影響度が強いことから。長期のものよりウエイトを高めて評価するという。

 

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